クチバシ)” の例文
郎女は、シヅかに両袖モロソデを、胸のあたりに重ねて見た。家に居た時よりは、れ、皺立シワダつてゐるが、小鳥のハネには、なつて居なかつた。手をあげて唇に触れて見ると、クチバシでもなかつた。
死者の書 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
思ひがけない声を、ナホも出し続けようとする口を、押へようとすると、自身すらいとほしんで居た柔らかな唇は、どこかへ行つてしまつて、替りに、さゝやかな管のやうなクチバシが来てついて居る——。
死者の書 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)