吊鐘つりがね)” の例文
「石川屋の一人娘ぢや、吊鐘つりがねがでつか過ぎて、お前は鼻から出た提灯位にしか見えないよ。惡いことを言はないから、はなつから諦らめてた方が宜いぜ」
一枚のマントは、海軍紺ネビイブルウのセル地で、吊鐘つりがねマントでありました。引きずるほど、長く造らせました。
おしゃれ童子 (新字新仮名) / 太宰治(著)
村に吊鐘つりがねが一つほしいと考へついたのは、奥山へしばを刈にいつた村の百姓でありました。
鳥右ヱ門諸国をめぐる (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
黄花石楠花きばなしゃくなげが、岩角の間に小さくしがみついて咲いている、その間を踏んで、登れば、千枚沢岳と悪沢岳の間に、赤石山が吊鐘つりがねを伏せたように円く立っている、支脈伝いに背面を見た時には
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
さっき二人が乗り捨ててきた自動オート三輪車のそばに、一人の怪人が立っていて、こっちをジッと見下ろしているのであった。彼は丈の長い真黒な吊鐘つりがねマントでもって、肩から下をスポリと包んでいた。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
植物の緑は、あわい。山が低い。樹木は小さく、ひねくれている。うすら寒い田舎道いなかみち。娘さんたちは長い吊鐘つりがねマントを着て歩いている。村々は、素知らぬ振りして、ちゃっかり生活を営んでいる。
佐渡 (新字新仮名) / 太宰治(著)