合財がっさい)” の例文
しかし、スリか何かに盗られた大きな信玄袋——合財がっさい袋ともいった——その中には、母の衣類化粧道具のほかは、印旛沼名物の鰻の白焼キしか這入っていなかった。
「だってそんな、……おじさまはお会いしたいくせに、わざと、冷然としていらっしゃるのよ、あたい、喧嘩しちゃった、明日からは一さい合財がっさいご用事してやらないってね。」
蜜のあわれ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
「ね、それで、一切合財がっさい、明白じゃありませんか!」
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
一切いっさい合財がっさいをぶちまけて聴かせたのだった。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「おいおい、鍍金師ときんや、仕事は中止だ。塗師ぬしも彫師も糸縒いとよりも染革仕事も、一さい合財がっさい、この間の註文仕事は、みな見合せだよ。……すばらしい景気どころか、大騒動が来ちまったんだ」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「よろしい、盗品も全部揃っている。そのバカ女のために、逃亡の計画も何も、滅茶苦茶にされた世界一の大バカ男が、ここにいる。しかしその大バカは、このに及んで悪びれた真似はせんのだ。一切合財がっさい諸君の展観に、供しよう。が、その前に」
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)