出船でふね)” の例文
「いつどころじゃねえ、もう出船でふねのしたくをしているようすなんで、風のあんばいじゃ夕方にも、港をズリだすかも知れませんぜ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのとき、ちからのこもるちょうしで、ドント、ドント、ドント、ナミノリコエテ……と、あにがはたらきながら、出船でふねうたをうたっているのがこえました。
ペスときょうだい (新字新仮名) / 小川未明(著)
五月雨の降っておる海岸か、もしくは川っぷちに在る遊女町のことを言ったので、出船でふね入船いりふねのあるその船路に近い遊女町は、五月雨の鬱陶しい中にもなお絃歌の声が聞えておる。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
「さあ、わたくしも、北ノ庄まででる船はないかと、ずいぶんたずねてみましたが、どうも折り悪く、出船でふねのついでがないそうで」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)