出家遁世しゅっけとんせい)” の例文
弟子の中の伊藤孫兵衛はおいにあたる者ゆえ、一子忠也ただなりの後見をたのむ。幕府へは、その由を願い出で、自分のことは、出家遁世しゅっけとんせいと届けておいてもらいたい。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その折彼が出家遁世しゅっけとんせいの念を起して詠んだのであるが、帝の御母后おんはゝきさきのもとにも馴染なじみの女房があったので、「なり果てむ身をまつ山の時鳥ほとゝぎすいまは限りとなき隠れなむ」
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そして坊主になるがよい。出家遁世しゅっけとんせいという奴は平安への唯一の道だ。
悪妻論 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
そのため、相互の使者の往返おうへんが三、四度にもおよんだ。結局、師直、師泰は高野山へのぼらせて生涯を出家遁世しゅっけとんせいに終らせる。これなら尊氏は二人へ告げて観念させることができるとしたのである。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)