八尋殿やつひろでん)” の例文
その時、玉簾のうしろに今まで身を潜めていた訶和郎かわろは、八尋殿やつひろでんの廻廊から洩れくる松明の光にてらされて、突然に浮き出た不弥の女の顔を目にとめた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
長羅はひとり転がる人波を蹴散らして宮殿の中へ近づくと、贄殿にえどのの戸を突き破って寝殿の方へんだ。広間の蒸被むしぶすまを押し開けた。八尋殿やつひろでんを横切った。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
若者の呼び声は、長羅の部屋の前を通り越して、八尋殿やつひろでんへ突きあたり、そうして、再び彼の方へ戻って来た。長羅は蹌踉よろめきながら杉戸の方へ近寄った。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)