とら)” の例文
多くは伝来の習俗にとらわれて小説戯曲其物を頭から軽く見ているからで、今の文学なり作家なりを理解しているのでは無い。
下等女の阿婆摺あばずれを活動力に富んでると感服したり、貧乏人の娘が汚ない扮装なりをしてめず臆せず平気な顔をしているのを虚栄にとらわれない天真爛漫と解釈したり
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
例えば信乃が故主成氏こしゅうしげうじとらわれをかれて国へ帰るを送っていよいよ明日は別れるという前夕、故主にえつして折からのそぼ降る雨の徒々つれづれを慰めつつ改めて宝剣を献じて亡父の志を果す一条の如き
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
渠らは空想にばかりとらわれて夢遊病的に行動する駄々ッ子のようなものだから、時々はきゅうえてやらんと取締りにならぬとまで、官憲の非違横暴を認めつつもとかくに官憲の肩を持つ看方みかたをした。
二葉亭追録 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
因襲を知るものは勢い因襲にとらわれる。