吹けよ河風上れよすだれ三下さんさがりにめやうたえの豪遊を競うものはまれであったが、その代り小舷こべり繻子しゅす空解そらどけも締めぬが無理かと簾おろした低唱浅酌ていしょうせんしゃく小舟こぶねはかえっていつにも増して多いように思われた。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)