五渡亭国貞ごとていくにさだ一勇斎国芳いちゆうさいくによし以下の豊国門人、また菊川英山きくかわえいざん渓斎英泉けいさいえいせん鳥居清峰とりいきよみねらは不幸なるこの時代を代表すべき画工なり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
美人画の五渡亭国貞ごとていくにさだ、風景画の一立斎広重いちりゅうさいひろしげ、武者絵の一勇斎国芳いちゆうさいくによしと名人上手簇出ぞくしゅついきおいに駆られて、天保年間の流行は、いやしくも絵心あるものは、猫も杓子も、いや国主大名から、質屋の亭主
越後上布えちごじょうふ帷子かたびらの上に重ねたしゃの羽織にまで草書そうしょに崩した年の字をば丸く宝珠ほうじゅの玉のようにした紋をつけているので言わずと歌川派うたがわはの浮世絵師五渡亭国貞ごとていくにさだとは知られた。鶴屋はびっくりして
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)