たとへば久保田万太郎くぼたまんたらう君なぞは、純日本種の作家のやうに思はれて居るが、久保田君の小説には、プロロオグと横文字に題を書いたのがある。
東西問答 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
雨上あまあがりの瓦屋根だの、火のともらない御神燈ごしんとうだの、花のしぼんだ朝顔の鉢だのに「浅草」の作者久保田万太郎くぼたまんたらう君を感じられさへすればいのである。
野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ことにくおしつまつて、もう門松かどまつがたつてゐるさういふ町を歩いてゐると、ちよつと久保田万太郎くぼたまんたらう君の小説のなかを歩いてゐるやうな気持でいい気持だ。
一番気乗のする時 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
鈴木三重吉すずきみへきち久保田万太郎くぼたまんたらうの愛読者なれども、近頃は余り読まざるべし。風采瀟洒せうしやたるにもかかはらず、存外ぞんぐわい喧嘩けんくわには負けぬ所あり。支那にわたか何か植ゑてゐるよし。
学校友だち (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)