不穏当ふおんとう)” の例文
旧字:不穩當
しかし使用するごとに、何だか不穏当ふおんとうな心持がするので、自分でも実はやめられるならばと思って考えてみたが、私の健康状態を云い現わすべき適当な言葉は、にどうしても見つからなかった。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
相棒というのが不穏当ふおんとうなら、関係があると云ってもよい。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
私はとうとう叔父おじと談判を開きました。談判というのは少し不穏当ふおんとうかも知れませんが、話の成行なりゆきからいうと、そんな言葉で形容するより外にみちのないところへ、自然の調子が落ちて来たのです。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あるいは此家ここの御嬢さんかも知れない。しかし出帰でがえりの御嬢さんとしては夜なかに山つづきの庭へ出るのがちと不穏当ふおんとうだ。何にしてもなかなか寝られない。枕の下にある時計までがちくちく口をきく。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)