不屈ふくつ)” の例文
其處では勇氣が證される。精力が振はれる、そして不屈ふくつの精神がきたへられる。この煖爐だんろの側では、元氣な子供が彼にまさるのだ。
それとまた、あの不屈ふくつな直義すらが、その僥倖に感謝するの余り、自己の一剣を波間はかんへ投げて、船上から龍神をおろがんだという一事などもおもしろい。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
事、御理想の点になると、不屈ふくつ、少しも変らない信念を、かくそうとはなさらない。勝者の尊氏を前に、たちまち、あたるべからざる雄弁とはなられた。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御存じだと思ひますが、この子供たちを育てるに就いての私の方針は、贅澤ぜいたくと放縱に馴れさせようと云ふのではない、彼等を不屈ふくつにし、忍耐に富ませ、克己力こつきりよくを養はせるにあるのです。
したが、不屈ふくつなかれ忍剣は、たとえ、きもをなめ、身をにくだくまでも、ふたたび伊那丸いなまるをさがしださずに、やむべきか——と果てなき旅をつづけていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)