不仕鱈ふしだら)” の例文
丹三郎の不仕鱈ふしだらには限りが無かった。草津、水口みなくち土山つちやまを過ぎ、鈴鹿峠すずかとうげにさしかかった時には、もう歩けぬとわめき出した。
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
先天的の不良性でも、それは矢張り数代、もしくは数十代前からの大人の不仕鱈ふしだらが遺伝したものである。子女の不良を責める前に、大人は先ずこの事を考えねばならぬ。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
「阿呆! いま何時や思てる? 若い女だてら夜遊びしくさって、わいはお前をそんな不仕鱈ふしだらな娘に育ててない筈や。じゃらじゃらと若い男と公園でボートに乗りくさって……。」
わが町 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
友達はその女が不仕鱈ふしだらだという。でも不仕鱈ならお金を貰う筈がないでしょう。
工場細胞 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
そんな不仕鱈ふしだらな約束をしたとは、どうしても申せません。
偽悪病患者 (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
此の際に、そのほうだけを騒ぎ立て、ご自分の不仕鱈ふしだらな噂のほうは二の次にしようとなさる。
新ハムレット (新字新仮名) / 太宰治(著)
こんな不仕鱈ふしだらな女をひとり放って置いて、比律賓へ行ってしまえば、どうなっていたことかと、他吉はひやっとしたが、間もなく行われた町内のマラソン競争で桶屋の新太郎は一等をとった。
わが町 (新字新仮名) / 織田作之助(著)