上靴スリッパ)” の例文
兄が席を立って書斎にったのはそれからしてしばらくのちの事であった。自分は耳をそばだてて彼の上靴スリッパしずかに階段をのぼって行く音を聞いた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
若者のように理性を衝き破って全身の脈管にみなぎりわたってくることもあれば、時には眠られぬままに鍵がかかっているとは知りつつも、上靴スリッパを脱いで絨毯じゅうたんの上に跫音あしおとを忍ばせながら
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
寝台ベッドの上に懊悩しているのも堪え難く、仕舞いには上靴スリッパをつっかけて、私は寝衣ねまき姿のまま、寝室の中をグルグルと歩き廻っていたが、ええクソー! 思い切って自分のこの富の力をもって
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)