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もんじゅかく
「おお、あれはいつの年か、このへんで
戦いのあったとき焼けのこった
文殊閣にちがいない。もしかすると、
六部の
巣も、あれかもしれぬぞ……」
いつか、
裾野の
文殊閣でおちあった
加賀見忍剣も、この
戒刀のはげしさには
膏汗をしぼられたものだった。
「おお、いつか
裾野の
文殊閣で、たがいに心のうちを知らず、
伊那丸君をうばいあった
木隠龍太郎」
雨と黒煙で、人影は、
靄の夜の影法師ほどにしか見えない。ぬかるみには炎が
映っている。民家も焼けていれば、上野三十六坊も
文珠閣も炎を
噴いているのだ。