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物靜
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ものしづか
四隣は
氣味の
惡い
程物靜で、たゞ
車輪の
輾る
音と、
折ふし
寂寞とした
森林の
中から、
啄木鳥がコト/\と、
樹の
幹を
叩く
音とが
際立つて
聽ゆるのみであつたが、
鐵車は
進み
進んで
場處も
小石川の
植物園にちかく
物靜なれば、
少しの
不便を
疵にして
他には
申す
旨のなき
貸家ありけり、
門の
柱に
札をはりしより
大凡三月ごしにもなりけれど、いまだに
住人のさだまらで
和らげられ
物靜に庄兵衞妻其方が名は何と云ぞ又國は何れ成やと
問れしかば
豐はげら/\
笑ひ出し御奉行
樣は
私の名は
御存じないか私の夫は越後國寶田村の
昌次郎私は梅と申して上臺の
若夫婦なり夫を
して貰ひけるが或時
貴君の御本宅は
何方に候やと
聞ば老女私は馬喰町二丁目米屋市郎左衞門と云ふ
旅籠屋の
隱居なれども
甥が居る所は家内も
大勢殊に客の有る時は百人も
押込故逆上りて血の道も
起す程の
騷ぎ
成ば私ばかり
物靜に
消光度と別宅致せしなりとの
咄を