つま)” の例文
いやしくも小児こどもを預って教育の手伝もしようというものが、まるで狐につままれたような気持で、……家内にさえ、話も出来ん。
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何や、狐につままれたようなお話で、お聞き下さいましたみなさんは、物足らんように思われますやろが、私も実はけったいな気がしました。
余り意外だったので、きつねつままれたような心地がしてしばらく離れて立って見ていると、紅葉はっと顧盻ふりむいて気が付いたと見えてニッと微笑した。
あいちやんは宛然まるできつねつままれたやうながしました。帽子屋ばうしやつたことなになんだかわけわかりませんでした、しかしそれはそれでもたしかに英語えいごでした。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
さうしてところむら近所きんじよのものがひよつこりたづねてたのでかれきつねにでもつままれたやうにたゞおどろいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「おいにいや、どうしてこんなとこへ来たんだいおかしいな、きつねつままれたんじゃあないの?」
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
いずれの関門長も俗にいう狐につままれたごとく、ことにかの眼の鋭いチーキャブ、二十年以来インド地方に在って艱難辛苦かんなんしんくめつつ種々の世渡りをして来たかの人足廻にんそくまわしのダルケさえ
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
その神主は他国の馬骨で、土地に何の関係なければ惜し気もなくかかる濫伐を遂げ、神威を損じ、たちまち何方へか転任し、今日誰が何と小言吐くも相手なければ全く狐につままれしごとし。
神社合祀に関する意見 (新字新仮名) / 南方熊楠(著)
『いやもう、狐なら可いが、雀部さんにつままれてさ。』
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
なんてすましていらっしゃるんだもの。何だか私たちああんまりな御様子にあきれッちまって、ぼんやりしたの、こりゃあまあつままれてでもいないかしらと思った位だわ。
清心庵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「えッ?」と私はまるで狐につままれたような気がした。
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
悟りの悪い看守は狐につままれたよう。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
『狐にでもつままれたんですか?』
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
少々舞台に間が明いて、つままれたなりの饂飩小僧うどんこぞうは、てれた顔で、……幕越しに楽屋を呼んだ。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『あゝ、つままれた……つままれたんだ。いや、薄髯うすひげへたつらで、なんとも面目めんぼく次第しだいもない。』
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
釣鐘が目前めのまえへぶら下ったように、ぎょっとして、はっと正面へつままれた顔を上げると、右の横手の、広前ひろまえの、片隅に綺麗に取って、時ならぬ錦木にしきぎ一本ひともと、そこへ植わった風情に
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ると、外聞ぐわいぶんなんぞかまつてはられない。つままれたかたぶらかされたか、山路やまみち夢中むちゆう歩行あるいたこと言出いひだすと、みなまではぢはぬうちに……わかをとこ半分はんぶん合点がつてんしたんです。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いや、これは可怪おかしいぞ。一人ひとりばかりないのなら、をんなうかしたのだらうが、みせばあさんもなくなつた、とすると……前方さきさらはれたのぢやなくつて、自分じぶんつままれたものらしい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
が、例の牛蒡丸の洋杖ステッキで、そいつをひねくった処は、いよいよもってつままれものです。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
半分気味の悪そうに狐につままれでもしたようにてのひらに受けると——二人を、山裾やますそのこの坂口まで、導いて、上へ指さしをした——その来た時とおんなじに妹の手を引いて、少しせき足にあのみち
若菜のうち (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかし、つきにしろ、暗夜やみにしろ、、おもれで、つてくとると、めぐり田圃たんぼをうろついて、きつねつままれたとおもはれるやうな時代じだいことではまぬ。たれなんあやしまれようもれないのである。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うもおはづかしい……きつねつままれましたやうです。」
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「えろう、女狐につままれたなあ。」
小春の狐 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)