那須野なすの)” の例文
翌日あすは茫漠たる那須野なすのはらを横断して西那須野停車場ステーション。ここで吾輩は水戸からの三人武者と共に、横断隊に別れて帰京の途に着いた。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
もなくいんさまは三浦みうらすけ千葉ちばすけ二人ふたり武士ぶしにおいいつけになって、なんさむらい那須野なすのはらててわたしをさせました。
殺生石 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
少将はほとんど、感傷的に、将軍の逸話いつわを話し出した。それは日露戦役後、少将が那須野なすのの別荘に、将軍を訪れた時の事だった。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
美的百姓は憚りながらビーチアル先生よりも上手だ。然し何事にも不熱心の彼には、到底那須野なすのひえを作った乃木さん程の上手な百姓は出来ぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
私は、以前まえから箏曲では「那須野なすの」が、すこしの手も入れないで、あのまま踊になるということをいつも言っていた。
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
金眸がひげちりをはらひ、阿諛あゆたくましうして、その威を仮り、数多あまた獣類けものを害せしこと、その罪諏訪すわの湖よりも深く、また那須野なすのはらよりもおおいなり。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
と辰弥は微笑ほほえみて、私はあなたの琴を、この間の那須野なすののほかに、まあ幾度聞いたとお思いなさる。という。
書記官 (新字新仮名) / 川上眉山(著)
きつねうまにもらないで、那須野なすのはらを二本松ほんまつ飛抜とびぬけたあやしいのが、車内しやない焼酎火せうちうびもやすのである。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
男の子ならばむろ唐船からふねへ売りわたし、眉目みめよい女子おなごだと京の人々が、千里もあるように考えているあずまの国から那須野なすのの原をさらに越えて、陸奥みちのくのあらえびすどもが
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
頼長はすぐに泰親を召して占わせると、その金毛九尾の妖獣はまさしく玉藻の姿であることが判った。玉藻は東国へ飛び去って、那須野なすのヶ原をその隠れ家としているのであった。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
私の胸にふうっと、お父上と那須野なすのをドライヴして、そうして途中で降りて、その時の秋の野のけしきが浮んで来た。はぎ、なでしこ、りんどう、女郎花おみなえしなどの秋の草花が咲いていた。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
一行は今夜、那須野なすのはら黒羽くろばね町に一泊の予定で、その途中、有名な雲巌寺うんがんじへ回ってみる積りなので、急流の岸の水車小屋に足を運び
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
日本にっぽん国中くにじゅう方々ほうぼうめぐりあるいて、あるとき奥州おうしゅうからみやこかえろうとする途中とちゅう白河しらかわせきえて、下野しもつけ那須野なすのはらにかかりました。
殺生石 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
那須野なすのを吹く風は、どんな色でございましょう。玉藻たまもまえの伝説などからは紫っぽい暗示をうけますが、わたくしの知る那須野の野の風は白うございます。
平塚明子(らいてう) (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
オイソレと逃げる訳にも参らず、とうとう牛に曳かれて八溝山やみぞやまの天険をえ、九尾の狐の化けた那須野なすのはらまで、テクテクお伴をする事に相成った。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
わたしはとうとう泰成やすなりのためにいのせられて、正体しょうたいあらわしてしまいました。そしてこの那須野なすのはらんだのです。けれども日本にっぽん弓矢ゆみやくにでした。
殺生石 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)