りょう)” の例文
また幼い子どもらや、その乳母などは、車一りょうに、七、八人ずつ乗せ、それを幾輛もつらねて、京都の町々を引き廻しにしてさらした。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、十りょうの客車を牽引して、相当のスピードを持った、その上、下り坂にある列車は、そう、ぴたんと止まるわけはなかった。
鉄路 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
五銭の飛びのりがまず大快楽おおたのしみなり。車夫は水をまきはてて夕方のけしきをうっかりと見ている目の前へ。ガラガラガラとせくる一りょうの人力車。
藪の鶯 (新字新仮名) / 三宅花圃(著)
りょうのうば車で小児も喜び老人もまた小児のごとく喜びたもうかと思えば、福はすでにわがの門内に巣食いおり候、この上過分の福はいらぬ事に候
初孫 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
同じ工場で同じころ製作された三等客車三りょうと、食堂車、二等客車、二等寝台車、各々一輛ずつと、ほかに郵便やら荷物やらの貨車三輛と、都合九つの箱に
列車 (新字新仮名) / 太宰治(著)
現在馬車十九りょうであるから、一輛に附、年八百九十六円七十銭、一ヶ月七十四円七十二銭ということになる。
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
三人みたりで来たるとともに、門前に待ち居し三りょうの車がらがらと引き来るを、老紳士は洋傘パラソルの淑女を顧みて
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
彼のひつぎをのせた葬用馬車は一りょうの馬車を従えたまま、日の光も落ちない師走しわすの町を或火葬場へ走って行った。薄汚い後の馬車に乗っているのは重吉や彼の従弟いとこだった。
玄鶴山房 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
呼ばれた本人は、知らぬに、来る人をけて早足に行く。抜きくらをして飛んで来た二りょう人力じんりきさえぎられて、間はますます遠くなる。宗近むねちか君は胸を出してけ出した。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この日の戦さのすさまじさは後日人の口より色々と聞き及びましたが、ともあれ黄昏たそがれに至って両軍相引きに引く中を、山名方は打首うちくびを車八りょうに積んで西陣へ引上げたとも申し
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
邸前の坂道を疾駆してけ上る自動車の爆音が聞えたかと思うと、やがてそれが門前で緩んで、低い警笛アラームと共に、一りょうの自動車が、唐沢家の古びた黒い木の門の中に滑り入った。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
山村家であの関所をまもるために備えて置いてあった大砲二門、車台二りょう、小銃二十ちょう、弓十張とはりやり十二筋、三つ道具二通り、その他の諸道具がすべて尾州藩に引き渡されたのは
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
御者は書巻を腹掛けの衣兜かくしに収め、革紐かわひもけたる竹根のむちりて、しずかに手綱をさばきつつ身構うるとき、一りょうの人力車ありて南より来たり、疾風のごとく馬車のかたわらをかすめて
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
りょうの馬車を認め目科はれを呼留よびとゞめてず余に乗らしめ馭者ぎょしゃには「出来るだけ早くれ、バチグノールのレクルースまち三十九番館だ」と告げ其身も続て飛乗りつ只管ひたすらうませかたてたり
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
りょうの寂しい車である。どこにある銀座通やら、どこへ行く車やら。
そして、先に白龍廟で結んだ義の誓いを、さらに杯の上で固め、穆家の資産も、土地を置き残したほかはすべて十数りょうの車に移したのである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雨をく一りょうの車は輪を鳴らして、格子こうしの前で留った。がらりとく途端に、ぐちゃりとれた草鞋わらじ沓脱くつぬぎへ踏み込んだものがある。——叙述は第三の車の使命に移る。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すると土を積んだトロッコのほかに、枕木まくらぎを積んだトロッコが一りょう、これは本線になるはずの、太い線路を登って来た。このトロッコを押しているのは、二人とも若い男だった。
トロッコ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
この日の戦さのすさまじさは後日人の口より色々と聞き及びましたが、ともあれ黄昏たそがれに至つて両軍相引きに引く中を、山名方は打首うちくびを車八りょうに積んで西陣へ引上げたとも申し
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
二人ふたりが問答のうちに、一りょうの車は別荘の門に近づきぬ。車は加藤子爵夫人を載せたり。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
ふもとの白川口には、一りょうくるまが待っていた。二人の稚子ちごと牛飼の男が、そばの草叢くさむらに腰をすえて、さびしげに雲を見ている。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この時一りょうの車はクレオパトラのいかりを乗せて韋駄天いだてんのごとく新橋からけて来る。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
りょうの牛車が、五条大橋口から富ノ小路の里内裏さとだいりのほうへむかって、黒いわだちのあとをのこして行くのが見える。
角な荷梱にごり十箇。それには、大名府の役署に命じて、十りょう太平車うしぐるまを出させる。また軍兵のほか、軍部から力者十人を選ばせて、一輛一人ずつを配して付ける。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
べつにもう一組の護送兵が、二条辺から一りょうの牛車を押ッ包んで来て、それをも六波羅の一門へ追込んだ。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おけを載せた七りょう江州車こうしゅうぐるま(手押し車)をあちこちに停め、老若七人、胡坐あぐらやら、寝転ねまろびやら、また木の根や車のかじに腰かけている者など、思い思いな恰好だった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
主殿しゅでんの中門廊のほとりに、廊のらんへ寄せて、牛をはずした一りょうの女車がすえられてあり、ややはなれた所には、供の人々であろうか、ひれ伏した人影が、すべて声もなく
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
りょうくるまがついて、その中からあるじ月輪禅閤つきのわぜんこうが降りた姿を見とどけると、突然、物蔭から精悍せいかんな眼を光らせて走って来た天城四郎が今しも邸内に入ろうとする禅閤の法衣ほうえたもとをとらえて
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
りょうに余る牛車が西八条の門を出た。侍女や女童めわらべ文車ふぐるまだの弓長刀なぎなたを持った側臣だのがつづいてゆく、大路へ出ればいつのまにか、前後に騎馬武者と千人近い兵がそれを護る列となっていた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
りょうの車は、内院の門へ引きよせられた。二夫人はれんのうちにかくれた。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)