赤裸あかはだか)” の例文
大方の冬木立は赤裸あかはだかになった今日此頃このごろでも、もみの林のみは常磐ときわの緑を誇って、一丈に余る高い梢は灰色の空をしのいで矗々すくすくそびえていた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ると、太陽たいやうがキラ/\とかゞやいてひがしほうの、赤裸あかはだかやまいたゞきなゝめかすめて、一個いつこ大輕氣球だいけいききゆうかぜのまに/\此方こなたむかつてんでた。
夏の日は北国の空にもあふれ輝いて、白いこいし河原かわらの間をまっさおに流れる川の中には、赤裸あかはだかな少年の群れが赤々とした印象を目に与えた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
この調子で進んで行くと、一年ののちには神経が赤裸あかはだかになって、空気に触れても飛び上がるかも知れない。——昨夜ゆうべ小夜子は眼を合せなかった。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
暴風雨あらしに打たれたままの赤裸あかはだかで、腰帯に一挺の斧を挿んで、仁王の立ちすくんだような船頭が、思いきった顔色をしてこう言って相談をかけると
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
これはその時までにも、どうかすると師匠が云ひつけた事でございますから、弟子は早速衣類をぬぎすてて、赤裸あかはだかになりますと、あの男は妙に顏をしかめながら
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
彼は赤裸あかはだかに生長した精虫のやうにあまりに痛々しく人生を知りあまりにも可憐に現実の姿を見る苦労人でこのかくれたる敏感な表現はいたましいほどの弱々しい人間
必死の力を満身にこめてぐいと踏張ふんばり、看視人たちの手を振りもぎった途端に、赤裸あかはだかのからだは石畳のうえにころころと転がった。彼は首をり落とされたかと思った。
あのくちばし丹念たんねんに、這奴しやつむねはらのこりなくむしつて、赤裸あかはだかにしたところを、いきみをくれて、ぬぺらとして、葉隱はがくれに……へたばる人間にんげんをぎろりとにらんで、噴飯ふきだよし
月夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
醤は、サロン一つの赤裸あかはだかであった。くびのところに、からからんと鳴るものがあった。それはこの土地に今大流行の、けだものきばを集め、穴を明けて、純綿じゅんめんひもを通した頸飾くびかざりであった。
さるにても此まゝにてむすめごがうせ給はゞ我が命をめされ候へ、こゝにをられ候人々こそよき証人しようにんなれといひつゝ、赤裸あかはだかになりてかみをもさばき井のもとにはしりよりしたゝかに水をあび
中には赤裸あかはだかの彼がある。見物人は、太陽と雀と虫と樹と草と花と家ばかりである。時々は褌の洗濯もする。而してそれをかえでの枝にらして置く。五分間で火熨斗ひのしをした様に奇麗に乾く。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
あはれ、さは赤裸あかはだかなる、めしひなる、ひとりみつつ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そのむかし自然は人間を平等なるものに製造して世の中にほうり出した。だからどんな人間でも生れるときは必ず赤裸あかはだかである。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこでさからわずに付いてゆくと、役人はやがてまた、着物をぬぎ、帽子をぬぐという始末で、山へ登る頃にはほとんど赤裸あかはだかになってしまいました。
これはその時までにも、どうかすると師匠が云ひつけた事でございますから、弟子は早速衣類をぬぎすてて、赤裸あかはだかになりますと、あの男は妙に顔をしかめながら
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
赤裸あかはだかになりて水にとび入りつゞをはづし、さけあればつゞのまゝ舟に入れさけをいだす。
ひがしほう赤裸あかはだかやまいたゞきから吾等われらかほてらしたが、一同いちどうきた顏色がんしよくかつた。
彼等は頂天ちょうてん立地りっち何の恐るゝ処もない赤裸あかはだかの英雄である、原人げんじんである。彼等は元来裸である。何ものもたない。有たないから失うことが出来ない。失うものがないから、彼等は恐るゝことを知らぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
小林は受け取ったものを、赤裸あかはだかのまま無雑作むぞうさ背広せびろ隠袋ポケットの中へ投げ込んだ。彼の所作しょさが平淡であったごとく、彼の礼のかたも横着であった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
おどろいてお伊勢は台所へ駈け付けてみると、赤裸あかはだかの彼女は大きいたらいからころげ出して倒れている。お伊勢は再び奥へ引っ返して、行燈を持ち出して来た。
半七捕物帳:23 鬼娘 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
参謀の言葉が通訳されると、彼等はやはり悪びれずに、早速赤裸あかはだかになって見せた。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
行者はいかりたるいろもなく、なにともいはず衣服きるものぬぎてかたへの水楊かはやなぎにかけ、赤裸あかはだかになりて水をかんまゐりする方をふしをがみ、武士の手をとりて引起ひきおこしければなにのくもなくおきあがり
お秀は兄の弱点が自分のために一皮ずつ赤裸あかはだかにされて行くので、しまいに彼はじ入って、黙り込むのだとばかり考えたらしく、なお猛烈に進んだ。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
が、なお不安に思われるので、更に洋刃ないふを以ての顔の皮をぎ取った。衣服きものも剥いで赤裸あかはだかにしてしまった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
いや、それよりはこれまでのどの仏菩薩の御像おすがたにも似ていないのでございます。別してあの赤裸あかはだか幼子おさなごいだいてるけうとさは、とんと人間の肉を女夜叉にょやしゃのようだとも申しましょうか。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
世界が化物になった翌日からまた化物の競争が始まる。着物をつけて競争が出来なければ化物なりで競争をやる。赤裸あかはだかは赤裸でどこまでも差別を立ててくる。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
が、の一刹那せつなに講師が認めた彼の姿は、極めてせいの低い、殆ど赤裸あかはだかで、皮膚の色は赭土色あかつちいろで……。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
尼僧は赤裸あかはだかになって、手には鋭利らしい刀を持っていた。彼女はその刀をふるって、まず自分の腹をち割って臓腑をつかみ出し、さらに自分の首を切り、手足を切った。
去年私の病気をする少し前に、彼は突然皮膚病にかかった。顔から額へかけて、毛がだんだん抜けて来る。それをしきりに爪でくものだから、瘡葢かさぶたがぼろぼろ落ちて、あと赤裸あかはだかになる。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
蛇吉が退治に出るときは、いつでも赤裸あかはだかで、わずかに紺染めの半股引を穿いているだけである。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そのうちでも妓女ぎじょに対しては一糸を着けざる赤裸あかはだかにして、その身体からだじゅうを容赦なく打ち据えるばかりか、顔の美しい者ほどその刑罰を重くして、その髪の毛をくりくり坊主にり落すこともあり