複雑ふくざつ)” の例文
旧字:複雜
は、まれてなか予想よそうをしなかったほど、複雑ふくざつなのにあたまなやましました。そして、空恐そらおそろしさにふるえていました。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
恭一は非常に複雑ふくざつな表情をして、次郎と俊三とを見くらべた。三人は、それっきりおたがいに顔ばかり見合っていたが、恭一が、しばらくして
次郎物語:02 第二部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
わたくしうれしいやら、こいしいやら、また不思議ふしぎやら、なになにやらよくはわからぬ複雑ふくざつ感情かんじょうでそのときはじめて自分じぶんたましいおやまえ自身じしんしたのでした。
動機どうきは、たんに哲学上の好奇心からこともあるし、又世間せけんの現象が、あまりに複雑ふくざつ色彩しきさいを以て、かれあたまを染めけやうとあせるからる事もあるし
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
小ツルと松江まつえがとびとびして勇みたった。だまっているのは早苗さなえと、片桐かたぎりコトエだけである。早苗はもちまえの無口からであったが、コトエのほうは複雑ふくざつな顔をしていた。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
しかし、そうだとすると、いよいよ俵という字には複雑ふくざつな感情が、からみついてくる。
親馬鹿入堂記 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
昔の経済社会とは違って近代は一国内における経済現象げんしょうさえなかなか複雑ふくざつになって来ているに、いわんや国家的経済現象に至ってはなかなか個人の力で如何いかんともできぬことがままある。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
僕「へええ、もっと複雑ふくざつなのですか?」
不思議な島 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
障子しょうじ欄間らんま床柱とこばしらなどは黒塗くろぬりり、またえん欄干てすりひさし、その造作ぞうさくの一丹塗にぬり、とった具合ぐあいに、とてもその色彩いろどり複雑ふくざつで、そして濃艶のうえんなのでございます。
次郎は妙に用心深い眼をしてたずねたが、それには、かなり複雑ふくざつな気持がこめられていた。
次郎物語:02 第二部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
ふえや、ことのような、単純たんじゅん楽器がっきでは、どうすることもできないけれど、オルガンのように、複雑ふくざつ楽器がっきになったら、なんとかして、その目的もくてきたっせられは、しないかということをかんがえたのです。
楽器の生命 (新字新仮名) / 小川未明(著)
竜神りゅうじん受持うけもちはなかなかおおきく、ひろく、そして複雑ふくざつで、とてもそのすべてをかたりつくすことはできぬ。
そのまちほうからは、これまでにないよい音色ねいろこえてきました。そのおとはいつもよりにぎやかそうで、また複雑ふくざつした音色ねいろのようにおもわれました。さよはまたそこまでいってみたくなりました。
青い時計台 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのあいだにどういう複雑ふくざつ事情じじょうがあったことかしれません。
ある冬の晩のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)