薄物うすもの)” の例文
但僧侶の袈裟とかいふ樣な、古代の形式を保存すべき必要のあるものには、古い製品と同樣の薄物うすものを使用したりして居る。
染織に関する文献の研究 (旧字旧仮名) / 内藤湖南(著)
全身の豊満な肉体を露出するよりは、薄物うすものまとうた姿にかえって情調をそそられるといったような心理もないではない。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
さる子細しさいあればこそ此處こゝながれにおちこんでうそのありたけ串談じようだん其日そのひおくつてなさけ吉野紙よしのがみ薄物うすものに、ほたるひかりぴつかりとするばかりひとなみだは百ねんまんして
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
二人びきの車が泥塗どろまみれになって、入って来た。車から下りた銀杏返の若い女は、鼠色のコオトをぬいで、草色の薄物うすもので縁に上り、出て来た年増としまの女と挨拶して居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
わたくし服装みなりかわった瞬間しゅんかんには、もうわたくし守護霊しゅごれいさんもいそいそとわたくし修行場しゅぎょうばへおえになりました。お服装みなり広袖ひろそで白衣びゃくいはかまをつけ、うえなにやらしろ薄物うすもの羽織はおってられました。
近頃ちかごろはやりもののひとつになった黄縞格子きじまごうし薄物うすものに、菊菱きくびし模様もようのある緋呉羅ひごらおびめて、くびからむねへ、紅絹べにぎぬ守袋まもりぶくろひもをのぞかせたおせんは、あらがみいあげた島田髷しまだまげ清々すがすがしく
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
まるまると肥った色の白そうな女だった。年の頃は十八か九であろう。透きとおるような薄物うすもののワンピースで。——向うではこっちを急に見つけた様子をして、ものなれたウィンクを送った。
地獄街道 (新字新仮名) / 海野十三(著)
大體唐以前は、一般の好尚は薄物うすもの、透き通るものを好む傾向がある。勿論厚手の織物も其間に有つたにはちがひないけれども、一般には厚手は貴ばれない。
染織に関する文献の研究 (旧字旧仮名) / 内藤湖南(著)
わたくしはじめておにかかったときのお服装なりは、上衣うわぎしろ薄物うすもので、それに幾枚いくまいかの色物いろもの下着したぎかさね、おびまえむすんでダラリとれ、そのほか幾条いくすじかの、ひらひらしたながいものをきつけてられました。