かゝ)” の例文
やゝ老いた顔の肉はいたく落ちて、鋭い眼の光の中に無限の悲しい影を宿しながら、じつと今打ちにかゝらうとした若者の顔をにらんだ形状かたち
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
その成金の一人に、神戸に上西うへにし亀之助氏がゐる。ふところ加減がいだけに金のかゝるものならどんな物でも好きだが、たつた一つ自動車だけは好かない。
それ惣蒐そうがかりにて叩き倒せと手に/\息杖いきづえを振り上打てかゝるに半四郎も酒屋の軒下のきしたにありし縁臺えんだい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
今度は良兼もをかしな智慧ちゑを出して、将門の父良将祖父高望王の像を陣頭に持出して、さあが放せるなら放して見よ、鉾先ほこさきが向けらるゝなら向けて見よと、取つてかゝつた。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
と真に突いてかゝった時に權六が
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
今しも三人の若者が眼をいからし、こぶしを固めて、いきほひまうに打つてかゝらうとして居るのを、傍の老人がしきりにこれをさへぎつて居るところであつた。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
将門の兵は千人に満たなかつたが、副将軍春茂(春茂は玄茂か)陣頭経明遂高かつたか、いづれも剛勇を以て誇つてゐる者どもで、秀郷等を見ると将門にも告げずに、それ駈散らせと打つてかゝつた。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
自分の財産から割り出して、建築費をざつと十二三万円とめて、ぼつ/\普請にかゝつたが、住家すみかが八九分がた出来上つた頃には、株の上景気で財産が二三倍がた太つてゐるのに気注きづいた。
よろ/\と身体からだをよろめかしながら、なほ其相手に喰つてかゝらうとするので、相手の若者は一先ひとまづ其儘次の間へと追遣られた。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
富豪かねもちといふ富豪かねもちはみんな禿頭を抱へて欧羅巴ヨーロツパの方へ逃げて往つた。アンドリユー・カアネギーもその仲間に洩れず、欧羅巴行きの支度にかゝつた。支度が出来あがると支配人の一人を呼び出した。