)” の例文
旧字:
実際また王生は、仲のい友人の趙生ちょうせいと一しょに、自由な生活を送っていた。きに行く事もある。はくを打って暮らす事もある。
奇遇 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「いえ、まだわたしは、だれにもあいませんでした。今度こんどあったら、みんなにかしてやろうとおもっています。」と、ぶとがこたえました。
太陽とかわず (新字新仮名) / 小川未明(著)
ただいずこともなく誇れるたかおもかげ眉宇びうの間に動き、一搏いっぱくして南の空遠く飛ばんとするかれが離別の詞を人々は耳そばだててけど
おとずれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
クリストフはある晩彼女の演奏をいて、その演奏振りに驚かされた。音楽会が終わって握手をしに行った。彼女はそれを感謝した。
十三絃じゅうさんげんを南部の菖蒲形しょうぶがたに張って、象牙ぞうげに置いた蒔絵まきえした気高けだかしと思う数奇すきたぬ。宗近君はただ漫然といているばかりである。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
妻の七夕の止めるのもかず、そこにっている瓜を食べようと思って、二つにたてに瓜を割ったら、それがたちまち天の川になった。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
どうぞ是非ぜひ一ついていただきたい、とうのは、じつはそうわけであるから、むしろきみ病院びょういんはいられたほう得策とくさくであろうとかんがえたのです。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
さいの出た跡で、更に酒を呼んだ宗右衛門は、気味の悪い笑顔えがおをして五百を迎える。五百はしずか詫言わびごとを言う。主人はなかなかかない。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
そのうち、正ちゃんがどこからか帰って来て、僕のそばへ坐って、今いて来た世間のうわさ話をし出す。お君さんは茶を出して来る。
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
基督の信は、常にうちに神を見、神の声をけるより来たり、ポーロの信は、其のダマスコ途上驚絶の天光に接したるよりき出でたり。
予が見神の実験 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
お天気のこと、恋愛のこと、文学のこと、彼は女の喋る言葉にれることもあったが、何かがパッタリ滑り堕ちるような気もした。
火の唇 (新字新仮名) / 原民喜(著)
うしてもわからんかつた。うるさくいつたらしまひにやおまへにはわからない、とさうおいひであつた、また推返おしかへしていたら、やつぱり
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そして、ほかのが、どれもこれも、よく言うことをくといったらない。この親鳥にしてこの子ありである。一つとして動かない。
「座敷へ上がり込んじゃ興がめる。ほうも、く方も、外でこそ流しの味、金襖きんぶすまでは野暮やぼになる。そうおっしゃっておくんなさい」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このたびの我が旅故郷の閑古鳥かんがためとも人に云ひぬ。塵ばみたる都の若葉せはしさ限りもなき陋巷ろうかうの住居に倦み果てゝとも云ひぬ。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
みなさんが私のこういう話をいてくださるのは、仏教に対してかなり久しい間の関心をもっておられる熱心なかたであると思いますし
生活と一枚の宗教 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
そのほかにも母には一つ一つ思出がありそうでしたが、私はたいていのところで、くのをやめて外へ遊びに出て了うのでした。
虫干し (新字新仮名) / 鷹野つぎ(著)
「こんどのおかあさんもいいおかあさんだから、くなったおかあさんとおなじように、だいじにして、いうことをくのだよ。」
松山鏡 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
何の見る物もなく風情ふぜいもないので、夫人があやしんで質問したところ、ヘルンは耳を指して、『おきなさい。なんぼ楽しいの歌でしょう』
きみ、ちょっとたまえ。きみはずいぶんっともないね。だから僕達ぼくたちきみっちまったよ。きみ僕達ぼくたち一緒いっしょわたどりにならないかい。
春琴は常に我が居間の床脇とこわきの窓の所にこの箱をえてき入り天鼓の美しい声がさえずる時は機嫌きげんがよかった故に奉公人共は精々水を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
おめえがここでたった一言ひとこと。おなつかしゅうござんす、とかなんとかいってくれさえすりァ、おいらのたのみァいてもらえようッてんだ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
身にしみてける浪子は、答うるまでもなくただ涙の顔を上げつ。幾が新たにくめる茶をすすりて、老婦人は再び談緒だんちょをつぎぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
「もっと、とっぷりとかるようなのみものはない?」「しとしとと、こう手でれるような音曲おんぎょくいなあ。」母は遂々とうとうさじを投げた。
桃のある風景 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
気がつくと、私の傍で妻もその小鳥の啼くのを一しょにいていたと見え、それがそのまま啼き止んでしまうと、私の方へ顔を上げながら
朴の咲く頃 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
豚はこれをすっかりいた。そして又大へんいやになった。楊子のときと同じだ。折角のその阿麻仁も、どうもうまく咽喉のどを通らなかった。
フランドン農学校の豚 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
何という懐かしい、久しぶりにく女の声であろう。振りかえって考えると、それは去年の五月から八、九カ月の間も聴かなかった声である。
黒髪 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
父はベンチに腰掛こしかけて、むちの先で砂に何やら書きながら、半ばは注意ぶかく、半ばは放心のていで、わたしの話をいていた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
何と云われても仕方はないわ、ああッ火も小さくなって寒うなった、もうもう寝てでもしまおうよ、とけば一々道理の述懐。
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
庸三も彼女も固くなってしまったところで、葉子を照れさせないために彼は蓄音機をきに、裏にある子供の家へ案内した。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
丁度夏のひる前の事で、女客は顔の汗を拭き/\感心したやうに幾度いくたびか首をつてれてゐたが、暫くすると発明家の顔を振り向いて訊いた。
イエス天を仰ぎて言いけるは、父よ、すでにわれにけり、われこれをなんじに謝す。われなんじが常に聴くことを知る。
一、幼少の折、学校で学問の大事なことをいて、よし学者にならなくとも、勉学読書はいとまあるごとにおこたるまいと思った。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
然れども幸か不幸か、余は今なほ畳の上に両脚りょうきゃくを折曲げ乏しき火鉢ひばち炭火すみびによりてかんしのぎ、すだれを動かすあしたの風、ひさしを打つ夜半やはんの雨をく人たり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
預けてあるげっちょろけたお椀に、飯や汁を一緒に盛って食いながら、私の読む講談にれるのが習慣であった。
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
かみさま、うぞわたくしの一しょうねがいをおとどくださいませ……。わたくし女房奴にょうぼうめ入水にゅうすいするともうして、家出いえでをしたきり皆目かいもく行方ゆくえわからないのでございます。
あたしは暇にあかしてそうして見たかった。彼女の日常起居、生れてからの一切をいて、それを忠実な自叙伝ふうな書き方にしてゆきたいと願った。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「もういっさい何も聞かせないようにしてくれ。あれに関した話をけばまた悲しみがくばかりだから、かえってあれの行く道を妨げることになる」
源氏物語:36 柏木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
ただ、彼は、彼にとって全く無意味だとしか思われない言葉を、いつまでもいているのがばかばかしかった。
次郎物語:03 第三部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
これは充分いて頂きたい……私は今度、主任の役をお受けしたのでありますが、馬上の楠公というので、差し当って馬の製作に取り掛からねばなりません。
この夜ヨハンの案内してくれた場所は料亭で、食事をしてから後に、最少は五歳、最年長は二十歳の二十数人からなるジプシイ楽団のヴァイオリンをいた。
罌粟の中 (新字新仮名) / 横光利一(著)
人々はかれの語るをいていてもすこぶるまじめでない。彼らはかれを信じたらしく見えない。かれはその背後うしろで彼らがこそこそ話をしているらしく感じた
糸くず (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
差当さしあたりこの病を医すべき適切なる薬餌やくじを得、なお引続き滞岳たいがくして加養せんことを懇請こんせいしたれども、かれざりしかば、再挙の保証として大に冀望きぼうする所あり
この一言を弟子たちの口からかんがために、これまで親しく薫陶し給うたのでありました。イエスは決して御自分のことを弟子たちに吹き込み給わなかった。
涼しい、生き返るような風が一としきり長峰の方から吹きおろして、汗ばんだ顔を撫でるかと思うと、どこからともなくひぐらしの声が金鈴の雨をくように聞えて来る。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
左様さやうであらう、ソラ此器これ脈搏みやくはくくんだ、うだグウ/\るだらう。登「エヘヽヽヽくすぐつたうござりますな、左様さやうよこぱら器械きかいをおあてあそばしましては。 ...
華族のお医者 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
僕は毎晩のように鉱石の上を針でさぐりながら、銚子局の出す報時信号タイム・シグナルのリズムにれたものです。
壊れたバリコン (新字新仮名) / 海野十三(著)
もう寝たふりをして置こうと、夜着をかぶり、きたくもない話なので、耳を塞いでいると、そのうち、またねむってしまったようです。あの頃は、よく眠りました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
狐が軍人に化けて火薬庫の衛兵を脅かそうとしたというのである。赤羽あかばねや宇治の火薬庫事件が頭に残っている際であるから、私は一種の興味を以てその話をいた。
二階から (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
すこぶる才走った女で、政治むきの事にまで容喙ようかいするが、霊公はこの夫人の言葉ならうなずかぬことはない。霊公にかれようとする者はまず南子に取入るのが例であった。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)