美々びび)” の例文
公爵家の紋章で美々びびしく装われた三十三頭の牛が、羅馬の街上に、その尨大な石材をいて、ノメンタナ街のやしきへ練り込みました。
踊る地平線:10 長靴の春 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
「それがしも、よく覚えております。おびただしいお荷物、美々びびしいお輿。飾り馬だのお供の人々にかこまれて、湖北へ嫁がれた日の御盛事を」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこには、高島田に、振袖美々びびしく着飾った、我娘照子が、見も知らぬみにくい若者と並んで写っているではないか。明かに結婚の記念写真だ。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
場内を一巡して、またエレヴェーターの前に戻って来て、美々びびしく飾られている帯地の陳列を眺めていると、美和子が
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
実に美々びびしい打扮いでたちでこの時ばかりはいかに不潔なチベットの者でもその前夜から湯を沸かして身体をきます。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
とりが啼いて明星が消え、朝がすがすがしく訪れて来た時、美々びびしく着飾った武士達が多勢、立派な輿を二挺舁ぎ、この館を訪れた。大内家からの迎えであった。
弓道中祖伝 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そのいらかの上におおいかぶさった深い杉の森といい、昔かみしもを着けた御先祖が奥方や腰元や若党たちに見送られて供回り美々びびしく登城する姿なぞもそぞろにしのばれましたが
棚田裁判長の怪死 (新字新仮名) / 橘外男(著)
参覲さんきん交代で江戸に在勤中の大名は、自身で、国詰め中のものは、代りに江戸家老が、おのおの格式を見せた供ぞろい美々びびしく、大手おおてから下馬先と、ぞくぞく登城をする。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
五彩で美々びびしかきじどんがよかろ。そいでん、狩人かりうどどんに見つかってしまえば、それまでの命じゃ
南方郵信 (新字新仮名) / 中村地平(著)
この団欒まどゐの中に彼の如く色白く、身奇麗に、しかも美々びびしくよそほひたるはあらざるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
そうして、沖には高麗丸の船室ケビンが、美々びびしく、ちらちらと、今や輝き出した。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
玉ひかるべにさし指の美々びびしさにやらで別れし牧の花草
舞姫 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
氷河の上に美々びびしき木立こだち
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
剣は三尺に足らずといえども物干ものほ竿ざおより勝りましょう。お館には勿体ないものに美々びびしい衣裳を着せてお用いではある
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
甲州街道五十三里を、大名行列いとも美々びびしく、江戸を指して発足したのは五月中旬のことであった。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しかし、何とこれは美々びびしく印刷された地図だろう! 日の矢と、それを反射する段々の小皺と。
踊る地平線:04 虹を渡る日 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
説明者が引込むと、二郎には分らぬけれど、賊の娘の文代が、洋服美々びびしく着飾って現われる。続いて、例の道化姿の座長が、手に青竜刀せいりゅうとうの様な大ダンビラをひっさげて出て来る。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
十月へはいって初のの日で、御玄猪ごげんちょのお祝い、大手には篝火かがりびをたき、夕刻から譜代大名が供揃い美々びびしく登城して、上様うえさまから大名衆一統へいのこ餅をくださる——これが営中年中行事の一つだが
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ずっと後の、江戸時代のそれのように、その頃の薦僧には一定した宗服しゅうふくもなかったし、掛絡から袈裟けさなども、あんな美々びびしいよそおいはしていなかった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
異様の扮装をした十数人の男が、美々びびしい一挺の輿こしを守り、若武士の眼前めのまえにいるではないか。
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
丹塗にぬり高欄こうらん美々びびしく、見上げるばかりの五重の塔が聳えている。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
私たちのホテル入りは so far 美々びびしい成功だった。
踊る地平線:09 Mrs.7 and Mr.23 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
部屋は、お綱のいる所の、暗たんたる板と柱の穴蔵と違い、普通と変らぬ部屋づくり、むしろ、美々びびしい結構である。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
旗本奴はたもとやっこ町奴まちやっこ、それと並び称された浪人組、衣裳も美々びびしく派手を極め、骨柄いずれも立派である。その数合わして六七十人、真昼間の春の盛り場で、華やかに切り合おうというのである。
二人町奴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
歳末の飾り美々びびしい銀座街の夜を一巡ひとめぐり歩いて
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
狐、しし小熊こぐまの生けるをおりに飼って往来の目をひく店もあり、美々びびしい奇鳥のき声に人足ひとあしを呼ぼうとする家もある。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)