羅馬ロオマ)” の例文
とすらりと立った丈高う、半面をさっと彩る、かば色の窓掛に、色彩羅馬ロオマ女神じょしんのごとく、愛神キュピットの手を片手でいて、主税の肩と擦違い
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
羅馬ロオマ七日なぬか、ナポリとポンペイに二日ふつかと云ふ駆歩かけあしの旅をして伊太利イタリイから帰つて見ると、予が巴里パリイとゞまる時日は残りすくなくなつて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
麻のようなブロンドな頭を振り立って、どうかしたら羅馬ロオマ法皇の宮廷へでも生捕いけどられて行きそうな高音でハルロオと呼ぶのである。
木精 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
煙草たばこの世に行はれしは、亜米利加アメリカ発見以後の事なり。埃及エジプト亜剌比亜アラビア羅馬ロオマなどにも、喫煙の俗ありしと云ふは、青盲者流せいまうしやりうのひがごとのみ。
下の一層は街に面したる大弓道をなして、その中には數輛の車を並べ立てたり。こはテルラチナの驛舍にして、羅馬ロオマ拿破里ナポリの間第一と稱へらる。
女を甘やかす今の欧羅巴ヨーロッパの„Dame“社会状態は、全亜細亜アジヤ人からも、それから古代希臘ギリシヤ、古代羅馬ロオマの人々からも嘲笑ちょうしょうされるにまっているといったショペンハウエルは
(新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
毒婦と盗人ぬすびとと人殺しと道行みちゆきとを仕組んだ黙阿弥劇は、丁度羅馬ロオマ末代まつだいの貴族が猛獣と人間の格闘を見て喜んだやうに、尋常平凡の事件には興味を感ずる事の出来なくなつた鎖国の文明人が
虫干 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
羅馬ロオマ見下みおろす丘の上の
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
通りがければと言って、渾名あだなを名刺に書くものはない。手札は立派に、坂田礼之進……かたわら羅馬ロオマ字で、L. Sakata.
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
羅馬ロオマなる聖彼得寺サント、ペエトル塔を觀てミケランジエロが作りし雛形ひながたの美に驚くは、建築を視る眼あるものゝ皆能くするところなるべし。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
現に古代には軽羅けいらをまとつた希臘ギリシヤ羅馬ロオマ等の暖国の民さへ、今では北狄ほくてきの考案した、寒気に堪へるのに都合の善い洋服と云ふものを用ひてゐる。
何事によらず、今の世は遠く古の希臘ギリシア羅馬ロオマの世に及ばずと知り給へ。澆季げうきの世は古に復さんよしもなしと、かこち顏なり。
其れとなゝめに対して右方うはうそびえたウフイツチ邸は階下の広大な看棚ロオヂアを広場に面せしめて、その中には希臘ギリシヤ羅馬ロオマ時代の古彫像が生ける如くぐんを成して居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
そのなかにたしか、『陰陽二物』の何のと云つて日本国をけなしてゐたとおもふが、あれは無理だ。羅馬ロオマは無論巴里パリに行つても、倫敦ロンドン伯林ベルリンに行つても、さういふ邪気の無い絵はいくつも描いてある。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
羅馬ロオマ船出ふなでせし
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
我は羅馬ロオマの塵多きちまた、焦げたるカムパニアの野、汗流るゝ午景を背にせしを喜びて、人々の我を伴ひ給ひしを謝したり。
……博識にしてお心得のある方々は、この趣を、希臘ギリシア羅馬ロオマの神話、印度の譬諭経ひゆきょうにでもお求めありたい。ここでは手近な絵本西遊記でらちをあける。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いづれの地の記事も蕪雑であるが、伊太利イタリイの紀行中、羅馬ロオマついては数回にわたる記事を一括して新聞社へ送つたはずであつたのに、その郵便が日本へ着かずに仕舞しまつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
すると黄ばんだ麦の向うに羅馬ロオマカトリツク教の伽藍がらん一宇いちう、いつの間にか円屋根まるやねを現し出した。……
或阿呆の一生 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
娘の親は売手で、こっちが買手ででもあるようだ。娘はまるで物品扱を受けている。羅馬ロオマ法にでも書いたら、奴隷と同じように、res としてしまわねばならない。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
羅馬ロオマ時代の
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
上の方へ横に羅馬ロオマ字で DIDASKALIAジダスカリア と書いて、下にはたてに十一月例会と書いてある。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
羅希らきいでた有名の学士とは、希臘ギリシヤ羅馬ロオマの劇詩人だと思ふと、それだけでも微笑を禁じ得ない。
本の事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
あるいはまた、羅馬ロオマの兵卒たちの持っているたてが、右からも左からも、まばゆく暑い日の光を照りかえしていたかも知れない。が、記録にはただ、「多くの人々」と書いてある。
さまよえる猶太人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
昔の話に羅馬ロオマの Tiberius 帝が或る時話をして語格を間違へた。さうすると傍に聽いて居た Marcellus と云ふ人が、今のは違つて居ると批難して云つた。
仮名遣意見 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
シエクスピイアは羅馬ロオマの都に時計を置いて顧みなかつた。近松も時代を無視してゐることはシエクスピイア以上である。のみならず神代かみよの世界さへことごとく元禄時代の世界にした。
僕等の散文も羅馬ロオマのやうに一日に成つたものではない。僕等の散文は明治の昔からじりじり成長をつづけて来たものである。そのいしずゑゑたものは明治初期の作家たちであらう。
エリザベス朝の巨人たちさへ、——一代の学者だつたベン・ジヨンソンさへ彼の足の親指の上に羅馬ロオマとカルセエヂとの軍勢の戦ひを始めるのを眺めたほど神経的疲労に陥つてゐた。
歯車 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
羅馬ロオマ大本山だいほんざん、リスポアの港、羅面琴ラベイカ巴旦杏はたんきょうの味、「御主おんあるじ、わがアニマ(霊魂)の鏡」の歌——そう云う思い出はいつのまにか、この紅毛こうもう沙門しゃもんの心へ、懐郷かいきょうの悲しみを運んで来た。
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
しかし印画に映つたのは大きいⅥといふ羅馬ロオマ数字だつた。
横須賀小景 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)