真面目しんめんもく)” の例文
旧字:眞面目
英雄僧の真面目しんめんもく奕々えきえきとして光を放ち、五右衛門はもちろん座にある者一度にハッと威厳に打たれて息を深く呑んだほどであった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
是等が真面目しんめんもくならざる宗教家しふけうかなり、彼等の存在そんざい教会けうくわいがいあり、社界しやかいに害あり、国家こくかがいあり、今日は彼等を排除はいぢよすべき時なり。
時事雑評二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
と、孔明に託してったのである。孔明の生涯とその忠誠の道は、まさにこの日から彼の真面目しんめんもくに入ったものといっていい。
三国志:12 篇外余録 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこでちょっと日本の禅宗坊さんが問答をやるようになりましたから、私はじきに禅宗坊主の真面目しんめんもくでその問答に応じました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
何でも行きなりバッタリの無造作、無鉄砲をもって押通して行くところに、翁の真面目しんめんもくが溢るるばかりに流露している。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
我等猫属ねこぞくに至ると行住坐臥ぎょうじゅうざが行屎送尿こうしそうにょうことごとく真正の日記であるから、別段そんな面倒な手数てかずをして、おのれの真面目しんめんもくを保存するには及ばぬと思う。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼はついに一つのプランを思いついた。頭脳はにわかに冷静となった。科学者だった彼の真面目しんめんもく躍如やくじょとしてよみがえった。消去法とは一体どんな数学であるか。
間諜座事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかし「漢楚軍談」の漢の高祖に王者の真面目しんめんもくを発見するものは三尺の童子ばかりと云はなければならぬ。
大久保湖州 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
かつ誘導して、これに処する道を知らしめるのでありますから、吾人はかかる人物の考えやはたらきによって、沖縄人の真面目しんめんもくなる所を知らなければなりませぬ。
琉球史の趨勢 (新字新仮名) / 伊波普猷(著)
官事に鞅掌おうしょうして居ながら、その好意と悪意とを問わず、人の我真面目しんめんもくを認めてくれないのを見るごとに、独り自ら悲しむことを禁ずることを得なかったのである。
鴎外漁史とは誰ぞ (新字新仮名) / 森鴎外(著)
その語気の微妙なる部分までも穎敏えいびんに解し得る者あるか、または日本人にして外国語をくし、いかなる日本語にてもその真面目しんめんもくを外国語に写してごうも誤らざる者ありて
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
思ひあたることが無いでもない、人に迫るやうなかれの筆の真面目しんめんもくは斯うした悲哀あはれが伴ふからであらう、斯ういふ記者もたその為に薬籠やくろうに親しむ一人であると書いてあつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
吾々は彼の生涯の記録と彼の全集とを左右に置いて較べて見るときに、始めて彼の真面目しんめんもくが明らかになると同時に、また彼のすべての仕事の必然性が会得されるような気がする。
レーリー卿(Lord Rayleigh) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「恋しつつ、しかも恋人から別離して、それに身を震わせつつ堪える」ことを既に決意している、リルケイアンとしての彼の真面目しんめんもくをそこに私は好んで見ようとしていたのであった。
木の十字架 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
と、楊志も古い以前の身素姓みすじょうまでいわれては、ちょっと赤面を覚えたのだろう。自然その真面目しんめんもくを見せずにいられなかった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
実際じつさい真面目しんめんもく生涯せうがい真味しんみあぢはひし人のみがたがひともはたらき得る人なり 宗教しふけうを以て茶話席ちやわせき活題くわつだいとなすにとゞまるものは言語的げんごてき捺印的なついんてき一致いつちはかれよ
時事雑評二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
同君の経歴や、戸籍に関する調査は面倒臭いから一切ヌキにして、イキナリ同君の真面目しんめんもくに接しよう。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
もちろん外にも大乗仏教国はあるけれども萎靡いび振わずしてほとんどその真面目しんめんもくを失うて居ります。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
およそコンナ風で無資金の塾も維持が出来たが、その時の真面目しんめんもくを申せば、月末などに金を分配するとき、ややもすれば教師の間に議論が起るその議論はすなわち金の多少を争う議論で
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
しかし、さすが先頭を争ッてくるほどな敵はどれも猛者もさだった。ひるむどころか、血を見て初めて真面目しんめんもくをあらわすかのようなのが、すべて会下山の南を埋めた。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平生は塾務を大切にして一生懸命に勉強もすれば心配もすれども、本当に私の心事の真面目しんめんもくを申せば、この勉強心配は浮世の戯れ、仮りの相ですから、つとめながらも誠に安気です。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
その薬の真面目しんめんもくのいかんは法王の宮殿に出入する官吏あるいは官僧、その外それらの人々から聞き伝えて、いわゆるチベットの事情に通じて居る人間が知って居るというだけでございます。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
真面目しんめんもくならざる宗教家しふけうかとは、直接ちよくせつ間接かんせつ外国ぐわいこく伝道でんだう会社ぐわいしや補助ほじよあづかり居りながら外国ぐわいこく宣教師せんけうし悪口あくこう批難ひなんするものなり、社界しやかい先導者せんだうしやを以て自らにんじ居りながら社界しやかい引摺ひきづられつゝ行くものなり
時事雑評二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
そこに評価の不可能な彼……杉山茂丸の真面目しんめんもくがスタートしている事と、同時に、そうであるにもかかわらず、その古今の名探偵以上の智力と、魅力とをもって、政界の裡面を縦横ムジンに馳けまわり
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
また老人が長々病気のとき、其看病に実の子女と養子嫁と孰れかと言えば、骨肉の実子に勝る者はなかる可し。即ち親子の真面目しんめんもくを現わす所にして、其間に心置なく遠慮なきが故なり。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
統率こそ、彼の本領であり、彼の真面目しんめんもくのあらわるるところといえよう。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真面目しんめんもくで、現実もしくは現実以上に深刻痛切なものがあること。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
如何いかにもして彼等を救出すくいだして我が信ずる所に導かんと、有らん限りの力をつくし、私の真面目しんめんもくを申せば、日本国中の漢学者は皆来い、乃公おれが一人で相手になろうと云うような決心であった。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
となれば彼は、集中をもって当るのがその真面目しんめんもくだった。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
外国人が我が日本国の事情をつまびらかにせんとするは、容易なることにあらざるが故に、彼らをして我が真面目しんめんもくを知らしめんとするには、事の細大に論なく、仮令たとえ無用に属する外見の虚飾にても
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)