真個ほんとう)” の例文
旧字:眞個
ですけれど、あの、おまねかれたら、懐中ふところへならなほことだし、冥土めいどへでも、何処どこへでもきかねやしますまい……と真個ほんとうおもひました。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一つは、その為だが、二つには、領民のために、三つには、武士道のために——おごっている天下の人心を醒まして、ここに、真個ほんとうの武士あることを知らせるのだ
三人の相馬大作 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
「師範学校? 師範学校とは少し変だな。」私は、女がまた出鱈目を云っているのか、それとも、そう思っているのか、と、真個ほんとうに教育の有無あるなしをも考えて見た。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
……この本名の判らない男こそ真個ほんとうの「暗黒公使ダーク・ミニスター」である……大和民族の危機を救うべく、世界を跨にかけて活躍奮闘している孤独のダーク・ミニスターである。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
彼を釘抜と呼ばしめた真個ほんとうの原因であったかもしれないが、本人の藤吉は、その名をひそかに誇りにしているらしく、身内の者どもは、藤吉の鳩尾みぞおちに松葉のような
同い年で小学校を卒業し、同い年で同じ学校に入り、両人は真個ほんとうの仲よしで行く筈なのでした。
いとこ同志 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「これからは真個ほんとうに慈母さんの言事を聴いて、モウあんまり文三と口なんぞお聞きでないよ」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
真個ほんとうの意味での彼の理解では、絵の主題の上では社会的意義の分析に立脚することと、彼の制作の専門的な理解の意味に於いては、彼の制作法の科学的な分析に入つてもよい時代ではないかと思ふ。
「そりゃ真個ほんとうか!」
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
貴僧あなた真個ほんとうにおやさしい。)といつて、はれぬいろたゝへて、ぢつとた。わしかうべれた、むかふでも差俯向さしうつむく。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
昏迷こんめいせずにおられましょうか。……ロマノフ、ホルスタイン、ゴットルブ家の真個ほんとうの末路……。
死後の恋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「……私また吉村が可哀そうになって了った。……昨日、手紙を読んで私真個ほんとうに泣いたよ。」と、率直に、此の間と打って変って今晩は、染々しみじみと吉村を可哀そうな者に言う。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
真個ほんとうに本田さんは憤ッて来ないのだろうか?」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
あら、真個ほんとうだ、串戯じょうだんじゃないわ、叔母さん、こたまだ、こたまだッて鳴いてるわね、中でも大きな声なのねえ、叔母さん。
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「男というものは真個ほんとうに可笑いよ。細君があれば、あると言って了ったら好さそうなものに此方で、『あなた、奥様があって?』と聞くと、大抵の人があっても無いというよ。」
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
精神病に関する真個ほんとうの科学的研究がやって行けないのはあたかも、人間が一個の動物に過ぎないという見地に立脚しなければ、すべての医学の研究が遂げられないのと同じ事なんだから止むを得ない。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
真個ほんとう
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
それたいために、ひとうやつてかまへてる、……とおはなしがあつたやうに、とき坊主ばうずからいたんです……それは真個ほんとうことですか? 老爺おぢいさん。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
もし、そんなことが、真個ほんとうにあるところなら、生命いのちがけだつてねえ、一度来て見ずには居られないとは思ひませんか。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「ちょっと、通りがかりでは、こういうところが、こちらにあろうとは思われませんね。真個ほんとうい御堂ですね、」
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ときはい、かげが、じやうぬま歴然あり/\うつつて、そら真黒まつくろつたとふだ。……それ真個ほんとううかわからねども、お天守てんしゆむねは、今以いまもつてあきらかにうつるだね。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ね——義兄にいさん、……お可哀相かあいさうは、とつくのむかし通越とほりこして、あんな綺麗きれいかたうおなくなんなさるかとおもふと、真個ほんとう可惜あつたらものでならないんですもの。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
真個ほんとうに寝ていたのかと思うと、そうでありません。つがいが飛んだのを見ると、あきらかまなこを活かして、棚のパナマ帽を取って、フッと埃を窓の外へはじきながら
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
口惜くやしい、畜生ちくしやうめ、けだものめ、ト始終しじうさうおもつて、五ねんも八ねんたなければ、真個ほんとうわかることではない、おぼえられることではないんださうで、おなくんなすつた
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
巫女いちこいいぐさではありませんが、(からのかがみ)と云った方が、真個ほんとうは、ここに配合うつりいのですが、探した処でがないでは、それだと顔がうつりません。
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
真個ほんとうにそうなりましたら、どうしましょう。お庇様かげさまたすかりましてございますよ。ありがとう存じます。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
或時あるときも、また雪のために一日かたちを見せないから、……真個ほんとうの事だが案じていると、次の朝の事である。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
真個ほんとうはこの作家のものなどは、机に向って拝見をすべきであろうが、温泉宿の昼間、掻巻かいまきを掛けて、じだらくで失礼をしていても、たれ叱言こごとをいわない処がありがたい。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
貴下あなた真個ほんとうに未来というものはありますものでございましょうか知ら。」
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「そんな御義理を遊ばしちゃ、それじゃ私申訳がありません。それで無くってさえ、お通りがかりをお呼び申して、真個ほんとう不躾ぶしつけだ、と極りが悪うございましてね、赫々かっかっ逆上のぼせますほどなんですもの。」
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
が深く堅く目をつぶっていると思いつつ……それが病気で、真個ほんとうは薄目を明けているのかもはかられない、と、身だしなみを、恥かしくないまでに、坐ってカタカタと箪笥をあけて、きものを着かえて
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「へ、へ、わしあまた。真個ほんとう草葉くさつぱはなかとおもつたゞ、」
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
真個ほんとうの事を言ひませうか、私は人間ではないの。」
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
真個ほんとうなら、其処そこで死ななければならんのでした、)
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
真個ほんとうだよ、君。」
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
真個ほんとうだわ。」
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)