皐月さつき)” の例文
(高松のお藤さん)(長江のお園さん、おみつさん)医師いしゃの娘が三人揃って、(百合さん)(婦美ふみさん)(皐月さつきさん)歯を染めたのでは
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
□安田皐月さつきさんが白山はくさん前町三八に水菓子店を開業なさいました。皐月さんの愛嬌がいゝ為めか繁昌してゐます。果物もたいへん結構です。
江戸ツ子は皐月さつきの鯉の吹き流しなどと、得意になつてゐた一部もあるが、サラリとしたそのうらに、噛みしめた細かいキメはもつてゐる。
凡愚姐御考 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
美佐子は縁側に坐布団を敷いて一方の手で足の小指の股を割りながら、煙草を持った方を延ばして皐月さつきの咲いている庭の面へ灰を落した。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
さゝやかなる築山には皐月さつきが群生してゐて早夏真紅の花を燃やし、松の根方の八重山吹はまた暮春黄色い花を朽井戸の底深くへと散込ませた。
異版 浅草灯籠 (新字旧仮名) / 正岡容(著)
あくる朝はいわゆる皐月さつき晴れで、江戸の空は蒼々と晴れ渡っていた。朝の六ツ半(午前七時)頃に松吉が誘いに来たので、半七は連れ立って出た。
半七捕物帳:52 妖狐伝 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それでも、中務省なかつかさしょう陰陽寮おんようりょうから出たお話だとすれば、きっとまた何か悪いことが起るに違いないわ。物忌ものいみおこたれば、皐月さつきと云う月にはきまってわざわいが現れるのですもの。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
鐘に桜花さくらの散る弥生やよい、青葉若葉の皐月さつきも過ぎて鰹の走る梅雨晴れ時、夏に入って夏も老い、九月も今日で十三日という声を聞いては、永いようで短いのが蜉蝣かげろうの命と暑さ盛り
エヽ猿若座さるわかざ開業式かいげふしきでことふきのとう、二十四かうたけ山門さんもん五三のきぼしり、うすゆきの三にんわらび、たい十の皐月さつき政右衛門まさゑもんのたゝみいわし、なぞトふところでございます。
狂言の買冠 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
そこの皐月さつきと看板の出たいき茶屋らしい一軒へ、吸われるようにはいっていきましたので、伝六、辰はいうまでもないこと、名人もいささかあっけにとられた形でしたが、しかし
こひしいおひと、さよなら! このこひつぼみは、皐月さつきかぜそだてられて、またふまでにはうつくしうくであらう。さよなら/\! おまへむねにもわしむねにも、なつかしい安息あんそく宿やどりますやう!
道のあちらこちらにはパル(匂いある黄色の皐月さつき花)、スル(同じ赤皐月あかさつき)その他いろいろの草花にしずくの溜って居る様は、あたかもたまを山間に連ねたかのごとくに見えて居ります。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
今は早や凝つた形の雲とては見わけもつかず、一樣に露けくうるんだ皐月さつきの空の朧ろの果てが、言ふやうもなく可懷なつかしい。次いでやや暫くの間、死んだやうな沈默がこの室内に續いてゐた。
一家 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
おのれの妹に仕立てたる武智の姫君皐月さつきを人質にとられしため力及ばず「武智の姫はなんじの娘のつもりにて尼になす」と云ふ淀の方の言葉をきき「思ひおく事更になし」と、たちまち覚悟して自殺す。
両座の「山門」評 (新字旧仮名) / 三木竹二(著)
いずくんゾ欣然トシテコレニ叙セザルヲ得ンヤ。嘉永辛亥皐月さつき江戸枕山大沼厚撰。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そこには躑躅つつじが咲き残り、皐月さつきが咲き、胸毛の白い小鳥は嫩葉わかばの陰でさえずっていた。そして、松や楢にからまりついた藤は枝から枝へつるを張って、それからは天神てんじん瓔珞やぐらのような花房はなぶさを垂れていた。
藤の瓔珞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
のべ次に御むつしくとも御母公へ伺ひ度儀あり此廿二三ねん以前いぜんに御召使ひの女中に澤の井と申者候ひしやとたづねらるゝに母公答て私し共紀州表に住居ぢうきよ致し候節召使の女も五六人づつ置候が澤の井瀧津たきつ皐月さつきと申す名は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
中川の皐月さつきの水に人似たりかたればむ
源氏物語:02 帚木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
さはあれ皐月さつきさかりのよそほ
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
野の皐月さつき、空ものどかに
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
皐月さつきなかばの晴れた日に
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
皐月さつきの野邊と眺め見よ
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
皐月さつき照れ照れ
別後 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
□平塚さんは十二月号の安田皐月さつきさんの『生きることゝ貞操と』を読んで考へついたことがあるし生田花世いくたはなよさんについて何時も考へてゐたこともあるから
こゝ宇治拾遺物語うぢしふゐものがたりへるは、大納言隆国卿だいなごんたかくにきやう皐月さつきより葉月はづきまで平等院びやうどうゐん一切経いつさいきやう山際やまぎは南泉坊なんせんばうこもりたまひ、あふさきるさの者のはなし、高きいやしきをはず、話にしたがおほきなる草紙さうしに書かれけり
落語の濫觴 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
どこからか一羽のちょうが来て、ひらひらと皐月さつきの花の上を飛んで往った。
藤の瓔珞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ああ皐月さつき、——雲の麝香じやかう
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
皐月さつき上旬でありました。
雪霊記事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しづかなる皐月さつきの真昼
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
皐月さつき照れ照れ
枯草 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
皐月さつき上旬じやうじゆんでありました。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
皐月さつき風なく日はしぬ
草わかば (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
あはれ、皐月さつき軟風なよかぜ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
皐月さつきにこもり、刻々の
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
日は皐月さつき
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
皐月さつきの空のもと。
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)