用箪笥ようだんす)” の例文
主重兵衞の枕元に置いた用箪笥ようだんすの中から、これも錠前を綺麗に開けて、小判で三百兩、切餅を十二ほど持出されてしまつたのです。
「そうだろうと思った。それではお通し申して置き。それから、用箪笥ようだんす抽斗ひきだしの二番目のをそっくり引き出してここへ持って来て下さい」
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
側の机に十冊ばかり積み上げてある manuscritsマニュスクリイ らしいものを一抱きに抱いて、それを用箪笥ようだんすの上に運んだ。
あそび (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ぽかんと部屋へ帰ると、なるほど奇麗きれいに掃除がしてある。ちょっと気がかりだから、念のため戸棚をあけて見る。下には小さな用箪笥ようだんすが見える。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
茂兵衛は黙って正吉の横顔を見ていた、——そして暫くすると、用箪笥ようだんすの方へ立って行って、金包を拵えて戻ってきた。
お美津簪 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
もっともその間に、夫は必ず茶の間へ下りて用箪笥ようだんす抽出ひきだしから私の日記帳を取り出して盗み読みすることは間違いない。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そして、紀久子は自分の用箪笥ようだんすの引出しの底からそこにありったけの紙幣を掴み出して、それを洋服のポケットに押し込みながら部屋を出ていった。
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
子供の時父の用箪笥ようだんすから六連發のピストルを持出し、妹を目蒐めがけて撃つぞと言つて筒口を向け引金に指をかけた時
業苦 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
そして良人の傍を離れると、奥の間へ入って、しばら用箪笥ようだんす抽斗ひきだしの音などをさせていたが、それきり出ていった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
私の顔を見て笑ひ出して、黙つて、立つて行つて用箪笥ようだんすからお金を出して来てくれるといふことがよくあつた。
イボタの虫 (新字旧仮名) / 中戸川吉二(著)
仁吉はいきなり、用箪笥ようだんすにとびついて、がたがたと抽斗ひきだしを鳴らして、四ツに畳んだ人相書をそこへひろげた。
治郎吉格子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
洋食の食べかたなどと云うものは?——彼女はふと女学校の教科書にそんなことも書いてあったように感じ、早速用箪笥ようだんす抽斗ひきだしから古い家政読本かせいどくほんを二冊出した。
たね子の憂鬱 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
家に著くと、私はすぐ二階の自分の部屋に上がっていって、此の手帳を用箪笥ようだんすの奥から取り出してきた。
菜穂子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
盜み出さんとするところ主人あるじ九郎右衞門は目をさましヤレ泥坊どろばうと聲を立しかば盜賊は吃驚びつくりなし用箪笥ようだんすかゝへて逃出にげいでんとするを九郎右衞門飛懸とびかゝのがさじものをと押へるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
黒光りする用箪笥ようだんすから幾束かの紙幣を取り出して、一枚一枚丁寧に焼鏝やきごてをあててしわを延ばして行くのであった。そして私にも金をかく愛しなはれと教訓してくれた。
粂「へえ、用箪笥ようだんす抽斗ひきだしに這入っていますからすぐに取れます、そうしてのちにお宅へ出ますが何方どちらです」
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そうして、座敷の隅にあった用箪笥ようだんすの小引き出しがこじあけてあって、中がからっぽになっているところから見ると、犯人は、金がほしさに殺人を行ったことが推定された。
現場の写真 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
びんほつれを、うるさそうにかきあげしそのくしは吉次の置土産おきみやげ、あの朝お絹お常の手に入りたるを、お常は神のお授けと喜び上等ゆえ外出行よそゆきにすると用箪笥ようだんすの奥にしまい込み
置土産 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
この父は自分の退役も近づいたという顔つきで、本陣の囲炉裏ばたに続いたくつろぎのの方へ行って、その部屋へや用箪笥ようだんすから馬籠湯舟沢両村の古い絵図なぞを取り出して来た。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
幾度となくおじぎをしては私を見上げる彼の悲しげな眼を見ていた私は、立って居室の用箪笥ようだんすから小紙幣を一枚出して来て下女に渡した。下女は台所の方に呼んでそれをやった。
小さな出来事 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
秋暑しゅうしょ一日いちにち物かくことも苦しければ身のまはりの手箱用箪笥ようだんす抽斗ひきだしなんど取片付るに、ふと上田先生が書簡四、五通をさぐり得たり。先生きて既に三年今年の忌日きじつもまた過ぎたり。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
精巧な用箪笥ようだんすのはめ込まれた一けんの壁に続いた器用な三尺床に、白菊をさした唐津焼からつやきの花活はないけがあるのも、かすかにたきこめられた沈香じんこうのにおいも、目のつんだ杉柾すぎまさの天井板も
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
J氏も深くは言わないで、用箪笥ようだんすから鍵をとり出して私に渡してくれた。
主重兵衛の枕元に置いた用箪笥ようだんすの中から、これも錠前を綺麗に開けて、小判で三百両、切餅を十二ほど持出されてしまったのです。
御作さんは用箪笥ようだんす抽出ひきだしから小さい熨斗袋のしぶくろを出して、中へ銀貨を入れて、持って出た。旦那は口がけないものだから、黙って、袋を受取って格子こうしまたいだ。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
用箪笥ようだんす抽斗ひきだしや、そこらの間を、かた、こと、といっている間に、欄間らんまの額のうらから、手もつけない三つの封金を見つけておかしくなったように、口を押えた。
治郎吉格子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
家に著くと、私はすぐ二階の自分の部屋に上っていって、この手帳を用箪笥ようだんすの奥から取り出してきた。
楡の家 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
夫婦の居間になつてゐる奥の六畳の押入を開けると、下の段の隅ツこの、柳行李と用箪笥ようだんすの隙間の暗い穴ぼこになつた所に、紅くもく/\かたまつてゐるものが見える。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その晩葉子を例の近所の旅館に残して、庸三は家へ帰ってみたが、庸太郎が用箪笥ようだんすの引出しに仕舞っておいたという残りの二百円を見に行ってみると、それももう無かった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
土蔵の二階は暗かった、番札をった長持ながもち唐櫃からびつや、小道具を入れる用箪笥ようだんすなどが、南の片明りを受けて並んでいる。お美津は北側の隅へ正吉をれて行って、溜塗ためぬり大葛籠おおつづらの蔭をのぞきこんだ。
お美津簪 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
百両の金は実はおれ仕舞処しまいどころを違えて置いたのが、用箪笥ようだんすから出たから喜んでくれ、家来だからあんなにうたぐってもよいが、ほかの者でもあっては己が言訳いいわけのしようもない位な訳で、誠に申しわけがない
その上、女の帰った跡を見ると、留守中に探したものとみえて、用箪笥ようだんす抽斗ひきだしに入れておいた、平次の覚え帳が紛失しております。
一束ひとたばの手紙を出した。桂は、ぺらぺらと封だけを繰っている。驚いたのは露八である。どうして自分の家の用箪笥ようだんすの底にあったものが、奇兵隊へ渡っているのか。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夫婦の居間になつてゐる奥の六畳の押入を開けると、下の段の隅ツこの、柳行李やなぎごうり用箪笥ようだんすの隙間の暗い穴ぼこになつた所に、紅くもく/\かたまつてゐるものが見える。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
三千代は自分の荒涼な胸のうちを代助に訴える様子もなかった。黙って、次の間へ立って行った。用箪笥ようだんすの環を響かして、赤い天鵞絨ビロードで張ったさい箱を持って出て来た。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ふだん「能なし」とみくびっていただけに、それがあによめには反比例して強く感じられたらしい。がたがた震えながら、仏壇の蔭のほうへ手を入れかけ、ふとやめて、用箪笥ようだんす小抽出こひきだしをあけた。
七日七夜 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
と文治の用箪笥ようだんすの引出へ仕舞い置きましたのは親切なのでございます。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
砂糖袋かさけたずさえて作が急度きっとともをするのであったが、この二三年商売の方をけなどするために、時には金の仕舞ってある押入や用箪笥ようだんすかぎまかされるようになってからは、不断は仲のわるい姉や
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「まだ澤山無くなりましたよ。筆、墨、矢立、徳利、お孃さんの手箱の鍵、用箪笥ようだんすの鍵、お今どんの腰紐、お萬さんのかんざし、お文どんのくし、——」
夫婦の居間になっている奥の六畳の押入を開けると、下の段のすみッこの、柳行李やなぎごうり用箪笥ようだんすの隙間の暗い穴ぼこになった所に、あかくもくもくかたまっているものが見える。
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「みんなあの人に関係した書類なんだそうです。健三に見せたら参考になるだろうと思って、用箪笥ようだんす抽匣ひきだしの中にしまって置いたのを、今日きょう出して持って来たっておっしゃいました」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
節子はその二十五金の包みを、自分の用箪笥ようだんすの中へしまった。
おばな沢 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「まだたくさん無くなりましたよ。筆、墨、矢立、徳利、お嬢さんの手箱の鍵、用箪笥ようだんすの鍵、お今どんの腰紐こしひも、お万さんのかんざし、お文どんのくし、——」
私は日記帳を茶の間の押入の用箪笥ようだんすの抽出(私以外には用のない、誰も手を触れることのない抽出)の、へそ書だの父母の古手紙だのの重ねてある一番下に突っ込んでおいて
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
山の芋を枕元へ飾って寝るのはあまり例のない話しではあるがこの細君は煮物に使う三盆さんぼん用箪笥ようだんすへ入れるくらい場所の適不適と云う観念に乏しい女であるから、細君にとれば、山の芋はおろ
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
弥三郎を殺した毒薬は、民五郎が物好きで持っていたのを、用箪笥ようだんすから盗み出したもの、これはお白洲しらすで判りました。
「とんだ事をしたよ。鍵を茶の間の用箪笥ようだんすの上へ置いたなり……」
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と、すぐ用箪笥ようだんす小抽出こひきだしから出して見せた。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
彌三郎を殺した毒藥は、民五郎が物好きで持つて居たのを、用箪笥ようだんすから盜み出したもの、これはお白洲しらすで判りました。
奥では用箪笥ようだんすかんの鳴る音がした。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)