洒落しや)” の例文
お葉の差出した縫つぶしの、洒落しやれた紙入。小型ではあるが、少し嵩張かさばつた感じのを受取つて、平次は銀の小ハゼをはづしました。
宿やどかたらないつてふんですがね、ちよい/\彼處あそこるんですつて、いつも、つがひで洒落しやれてるわね。なんでせう。」
鳥影 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
回避くわいひする為に(たとひ無意識的ではあつたにもせよ)洒落しやれのめしてゐたのではないであらうか? 彼等の一人ひとり
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
春子は何時いつの間にどうした手段で求めたのか、絹靴下をはき、洒落しやれたラバソールをつつかけてゐた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
そしてとある一軒の洒落しやれたお茶屋に入つたので、初めてそれが遊女である事が判つた。馬と主人とはお茶屋の門先かどさきに立つて残り惜しさうに内部なかを覗き込むでゐた。
「夜目遠目傘のうち」なんていふ洒落しやれたことわざを幼な耳に、祖母の口から聞かされた私は、いろ/\な奇怪な昔ばなしを、祖母によつてまれて、白紙のやうな幼な心を
(旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
上戸じやうこも死ねば下戸も死ぬ風邪かぜ」で、毒酒のうまさに跡引上戸となつた将門も大酔淋漓たいすゐりんり島広山しまひろやまに打倒れゝば、「番茶にんで世を軽う視る」といつた調子の洒落しやれた将平も何様どうなつたか分らない。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
そんな洒落しやれた餘裕があらう筈はないと信じられる。
泡鳴五部作:03 放浪 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
「一と組ありや澤山ぢやないの、その布團の上へ、背中合せに寢るのも、洒落しやれてゐるわねえ、桃太郎の話か何んかしてさ」
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
更に洒落しやれて形容すれば、宝石の重みを苦にしてゐる、肥満したサルタンの病的傾向だつた。だから彼には谷崎氏と共に、ポオやボオドレエルに共通する切迫した感じが欠けてゐた。
あの頃の自分の事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ミラボーはそれを受取つたが、自分の頭にてゐるのは、賞品のよりもずつと上等の洒落しやれた帽子であつた。ミラボーはその上等の帽子を脱いで、そばにゐる禿頭の爺さんに呉れてやつた。
れば度胸どきようゑて、洒落しやれてる。……しつはいづれも、舞臺ぶたいのない、大入おほいり劇場げきぢやうぐらゐにんでたが、さいはひに、喜多八きたはち懷中くわいちうかるければ、かるい。荷物にもつはなし、おまけ洋杖ステツキほそい。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「貧乏になるのも洒落しやれてゐるぜ。世帶の苦勞をさせると、第一娘がもう少し悧口りこうになるよ、貧乏の味のよさを知らないのが金持の落度なんだ」
洒落しやれたどうふにも可哀あはれなのがある。
湯どうふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「そいつは一段と面白からう、酒が殘つて居るから、瓢箪へうたんに詰めて、もう一度橋の上に引返さう、人波に揉まれ乍ら、欄干らんかんの酒盛なんざ洒落しやれて居るぜ」
洒落しやれた印傅いんでんの懷ろ煙草入で、銀の吸口の煙管の端が見えてをりました。ザラにある品ぢやございません」
藁葺わらぶき洒落しやれた門を入つて、右左に咲き過ぎた古木の梅を眺め乍ら、風雅な入口のはんを叩くと
郊外の秋色を愛で乍ら——といふと洒落しやれて聞えますが、實は川越在の名主、庄司忠兵衞の餘儀ない頼みで、十五里の道を、ブラリブラリと二日がゝりで、町から三里ばかり
「あれ、お前もなか/\洒落しやれたことを言ふぜ。何時の間に、そんなに利巧りかうになつたんだ」
取出したのは、緑色呉絽ごろの紙入、半分は化粧道具を疊み込んだ、それは洒落しやれたものでした。辰三はそれを、自分の物ででもあるやうに、至つて氣樂に八五郎の手の上に置くのです。
「へエ、夜中に結び文か、洒落しやれたものだな、尤も呼出しの掛る當ては無いが」
銭形平次捕物控:274 贋金 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
洒落しやれた藝當ぢやないか、どうだい、お前の女房に世話をしようか」
銭形平次捕物控:167 毒酒 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「おや、大層洒落しやれたことを言ふぢやないか」