)” の例文
あるいは彼らが骨冷かに肉ち、世人せじんの一半は彼等が名を忘却したる時において、始めて彼らのきたる種子の収穫を見ることあり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
教会へは及ばずながら多少の金を取られてる、さうして家庭かない禍殃わざはひ種子たねかれでもようものなら、我慢が出来るか如何どうだらう
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
しかるに「種播者たねまきが種をきに行ってね」というふうに譬話をすれば、「おや」と思って聞き耳をそばだて、そのお話についてゆける。
主人は笑いながら言って、それからブドリといっしょに、片っぱしからオリザの株を刈り、跡へすぐ蕎麦そばいて土をかけて歩きました。
グスコーブドリの伝記 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
花ののちには子房しぼうが成熟して果実となり、果中に一種子があり、種皮の中には二子葉しようを有するはいがある。春にこの種子をけばく生ずる。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
耶蘇自身は己の知ったことじゃないというかも知れぬが、こんな争論の種ともなる曖昧の言論をいた責任は免れようがない。
論語とバイブル (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
野菜も買うとなるとなかなか高いので、大根人蔘にんじんの種を安くゆずってもらってこの裏の五坪の畑にき、まことに興覚めな話で恐縮ですが
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
紀州などの俚諺りげんに、「麦は百日のきしゅんに三日のりしゅん、稲は百日の苅りしゅんに三日の植付時うえつきどき」ということがある。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
一語の消息を伝うべき電線は無い事か、乗って行く鉄道はどうなった、地を掘るすきの様なものは無いか、何処かに種をく野原は有るまいか。
暗黒星 (新字新仮名) / シモン・ニューコム(著)
来年かれると芽が出て空気中の養分を取るまで土の下でその若芽わかめを養っているのですから胚乳と申します。玉子でいえば黄身きみと同じ事です。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
かのふみを世にかんためいくばくの血流されしや、へりくだりてこれに親しむ者いかばかり聖意みこゝろかなふやを人思はず 九一—九三
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
大雪にならぬ前に深田の葦を刈り、菜を漬け、畑の草を取つてくべきものは播き、冬ごもりの準備をする光景である。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
荘王は巫臣の諫を容れて何事も無く済んだが、巫臣が不祥の女だと云った如く、到るところに不幸をいた女であった。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
が、それはもとより酒の上の冗談に過ぎないのを、世間知らずの山育ちの青年わかものただ一図いちず真実ほんとうと信じて、こことんでもない恋の種をいたのであろう。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
種子たねだけをいて逝こう、「われは恨みを抱いて、慷慨こうがいを抱いて地下に下らんとすれども、汝らわれの後に来る人々よ、折あらばわが思想を実行せよ」
後世への最大遺物 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
現代の所謂いわゆるハイカラなどという奴は、柔弱、無気力、軽薄を文明の真髄と心得ている馬鹿者共である。こんな奴はついには亡国の種を糞虫くそむしとなるのだ。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
蕎麦そばは十俵の収穫があるとか、試植した銀杏いちょう、杉、竹などは大半枯れ消えたとか、栗も十三俵ほどいてみたが
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
古き書にもあるとおり、「なんじ一度ひとたび水田に種子たねけ、数日をて収穫すべし」と。われわれひとたびける種子たねむくいは、われわれ自身が刈らねばならぬ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
まづ始には女目付をんなめつけのバルバラがつぶやくやう、あのピエロオの拔作め、氣のかないのも程がある、カサンドル樣の假髮かづらの箱をおとして、白粉おしろいみんないて了つたぞ。
胡弓 (旧字旧仮名) / ルイ・ベルトラン(著)
若しそうだとすれば、数年以前彼の心の奥底に、ひそかかれた種が、今菰田の死に遇って、始めてハッキリした形を現したとも考えられぬことはありません。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
有明ノ名とみニ都内ニク。豪士冶郎やろうコノ楼ニ一酔セザル者ナシ。川口平岩ノ二楼ノ如キヤゝソノ下ニ就ク。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
病室の出入りに消毒することを実行せず、病人に触った手で何にでも触ると云う風なので、あれでは病菌をバラくようなものだと、第一に雪子から苦情が出た。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
生れたる者は多し、長ずる者は少なし、かれたる種子は万、欝として陰を為すものは三四に過ぎず。
詩人論 (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
「まだか」、この名は村中に恐怖をいた。彼れの顔を出す所には人々は姿を隠した。川森さえとうむかしに仁右衛門の保証を取消して、仁右衛門に退場を迫る人となっていた。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
それらの中を一人の頑丈な、陰鬱な大男が沈黙と絶望の冷やかな足取りで歩きながら、こうした人々の心に不快と、忿怒ふんぬと、なんとはなしに悩ましげな倦怠とをいて行った。
また数年の後に三、四十人ずつの卒業生を毎年出すとすれば、その三、四十人は優良な種子を社会にくようなものです。その種子が更に幾倍かの好い種子を生むに到るでしょう。
文化学院の設立について (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
草や木の種子たねをおきになつたのが、ほんの少しばかり芽を出しかけてをりました。
悪魔の尾 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
悪魔は、とうとう、数日の中に、畑打ちををはつて、耳の中の種を、そのうねいた。
煙草と悪魔 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
アイヌでは、畑に種子をくのに、シギの卵を潰してそれに浸して播くとみのりがいいという俗信があるので酋長の妻はわざわざシギの卵を捜してきて、それにアワの種子を浸して播いた。
えぞおばけ列伝 (新字新仮名) / 作者不詳(著)
もみなどの種子をいてその生長の遅速を試験してみると、低い土地から取って来た種子の方が高地から取ったのに比してよほど生長が早いという事がスイスやオーストリー辺で確かめられた。
話の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
篠懸すゞかけの木よ、總大將が乘る親船おやぶね帆檣ほばしら、遠い國の戀に向ふはらんだ帆——男の篠懸すゞかけ種子たねを風に石弩いしゆみの如く、よろひを通し腹を刺す——女の篠懸すゞかけ始終しじゆう東をばかり氣にしてゐて定業ぢやうごふ瞑想めいさうする
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
また先に息州の民趙丑斯ちょうちゅうし、郭菩薩等あり、謡言を倡え、弥勒仏まさに天下をつべしという、有司以て聞す、河南行省に命じてこれを鞫治きくちせしむ、これ弥勒仏の謡すでに久しく民間にくなり
防寨ぼうさいの中は、こわれた薬莢やっきょうき散らされて、雪でも降ったようだった。
杉の木の二、三本あった庭には、赤坂からもって来た、乙女椿おとめつばきや、紅梅や、海棠かいどうなどが、咲いたり、つぼみふくらんだりした。清子の大好きな草花のさまざまな種類が、植えられたり種をかれたりした。
遠藤(岩野)清子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
たんばかりの畑地はよくらされてある。麦でも直ぐいてよさそうに準備されている。何の種を播くのかとなおよく見ていると、百姓の馬としては、あまりに神威を備えた白馬はふさわしくない。
ただ芸術の種子をく地面がそれによって作られるのである。
偶言 (新字新仮名) / 津田左右吉(著)
「なにさ、かぬ種はえんからな!」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
立秋や時なし大根またかん
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
自己の職分と父の贖罪しよくざいと二重の義務をんでるのだからと懺悔ざんげして居る程です、思ふに我々のける種子たねつちかふものは、彼等の手でせうよ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
おかあさんが、家の前の小さな畑に麦をいているときは、二人はみちにむしろをしいてすわって、ブリキかんでらんの花を煮たりしました。
グスコーブドリの伝記 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
私は、どてら着て山を歩きまはつて、月見草の種を両の手のひらに一ぱいとつて来て、それを茶店の背戸にいてやつて
富嶽百景 (新字旧仮名) / 太宰治(著)
あるいはまた春日かすがの明神が初めて大和にお移りになったときに、お付きの神主が煮栗の実をいたともいう者もあります。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
米粒を地の中へけばその芽が発生して外の処から滋養分を吸収するまで籾の中で若芽を養っている食物です。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
裏の畠には、学校の小使に習って、豆、馬鈴薯じゃがいも、その他作りやすい野菜から種をいた。葱苗ねぎなえを売りに来る百姓があった。三吉の家では、それも買って植えた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この事件は自分が発頭人ほっとうにんともいうべきであって、塩冶の内室の世にたぐいなき艶色を自分がうかうかと吹聴ふいちょうしたればこそ、師直の胸に道ならぬ恋の種をいたので
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
伯夷叔斉はくいしゅくせい太公たいこうも群衆に逆らった心の独立はみすべきであるが、もし二人の兄弟が武王ぶおうに反対して、ひそかに出版物をき散らしたり、あるいはいんに徒党を組んだり
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
聴け、種く者、播かんとて出ず。播く時、路の傍に落ちし種あり、鳥来たりてついばむ。
キリスト教入門 (新字新仮名) / 矢内原忠雄(著)
競うのは持ち前の負けじ魂に発しているのでその目的にわぬ限りはみだりに浪費することなくいわゆる死に金を使わなかった気紛きまぐれにぱっぱっとき散らすのでなく使途を考え効果を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「荒つとに蔦のはじめや飾り縄」で、延喜式の出来た時は頼朝があごで六十余州を指揮しきする種子たねがもうかれてあつたとも云へるし、源氏物語を読んでは大江広元が生まれないはるかに前に
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
かう云ふわたしは北原白秋氏や木下杢太郎もくたらう氏のいた種をせつせと拾つてゐたからすに過ぎない。それから又何年か前にはクリスト教の為に殉じたクリスト教徒たちに或興味を感じてゐた。
西方の人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)