はゞかり)” の例文
その名をさんははゞかりあれど、同郷人の中に事を好む人ありて、余が屡〻しば/\芝居に出入して、女優と交るといふことを、官長のもとに報じつ。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
うぬが勝手に尊皇愛国を狭く解釈して濫りに不敬呼ばはりするは恐れ多くも皇室の稜威みいつを減ずるはゞかりある次第だ。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
はゞかりあることには侍れど、おん身にも總て過失なしとはいひ難くや侍らん。例之たとへばおん身は、いかなれば一時怒に任せて、彼美しき詩をき給ひし。われ。そは世に殘すべき價なければなり。
積薪せきしんおもはず悚然ぞつとして、たゞちに衣冠いくわんつくろひ、わかよめはゞかりあり、しうとねやにゆき、もし/\とこゑけて、さて、一石いつせきねがひませう、とすなはたしなところふくろより局盤きよくばんいだし、黒白こくびやく碁子きしもつしうとたゝかふ。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一日いちにちびればびただけ窮屈きゆうくつげたやう何所どこかでした。小六ころくにも丁度ちやうどそれとおなはゞかりがあつたので、られるかぎり下宿げしゆくにゐるはう便利べんりだとむねめたものか、つい一日いちにち/\と引越ひつこしさきおくつてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
お定め成れたならはゞかりながら宜敷よろしく御座りませうと云に重四郎さればで御座る世間せけんを渡り歩行あるく倦果あきはてたれども差當り未だ有縁うえんの地もないと見えてかく歩行あるきます何卒どうぞ五十か七十の敷金しききんでも致して何樣どのやうな所でも身を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
所が親戚のものははゞかりがあつて葬式をいたすことが出來ませんでした。其時眞志屋の先祖が御用達ごようたしをいたしてゐますので、内々お許をいたゞいて死骸しがいを引き取りました。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)