愚圖ぐづ)” の例文
新字:愚図
斷行だんかうさ。もう何も考へてゐることあ有りやしない。此の上愚圖ぐづついてゐたら、俺は臆病者おくびやうものよ、加之お房のことを考へたつて………」と思はず莞爾につこりして
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
平生へいぜいからお人好ひとよしで、愚圖ぐづで、低能ていのうかれは、もともとだらしのないをとこだつたが、いままつた正體しやうたいうしなつてゐた。かれ何度なんどわたしかたたふれかゝつたかれなかつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
さうしていよ/\となればおれがどうにでも其處そこ始末しまつをつけてるから、なんでも愚圖ぐづ/\してちや駄目だめだとおしなこゝろ教唆そゝつたのであつた。おしなから一しん勘次かんじせまつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
この上は錢形の親分にすがる外は無いと思ひ、芝口から飛んで來たものゝ、さて、何んと言つて親分に頼んだものか、きつかけが六つかしくて、愚圖ぐづ々々して居りました
愚圖ぐづらずにつておれとすこしふるへてたのむやうにへば、しがしいとふのではありませぬ、わたしからおねがひですうぞおりなすつて、くのがやにつたので御座ござりますとふに
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
小六ころくこの氣樂きらくやうな、愚圖ぐづやうな、自分じぶんとはあまりにへだつてゐるあにを、何時いつ物足ものたりなくはおもふものゝ、いざといふ場合ばあひに、けつして喧嘩けんくわはしなかつた。此時このとききふ癇癪かんしやくつのられた氣味きみ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
今日を限りの釜屋の退轉も、そんな事で愚圖ぐづ々々になり、曲者の捕まるまで、或は八千兩の行方がわかるまで、兎にも角にも、釜屋の一家は、そのまゝ町内預けにする外はなかつたのです。
手傳てづでえつてゝも、はあ、日暮ひぐれつたら、あつかもつかして凝然ぢつとしちやらんねえんだ、そんで愚圖ぐづ/\つてんの面白おもしれえからいてたな、丁度ちやうどえゝ鹽梅あんべえおれ草履ざうりひにつてつかせてな
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
八五郎は愚圖ぐづ々々して居りました。が、飛んで行くまでもなくこの騷ぎを聞き附けたものか、島五六郎と川前市助が、主人の千本金之丞に案内させて、うさんな顏を此方へ持つて來たのです。