ちょう)” の例文
これ勝伯の当時においてもっとも憂慮ゆうりょしたる点にして、吾人はこれを当時の記録きろくちょうしてじつにその憂慮のしかるべき道理どうりを見るなり云々うんぬん
ほかの守護のような苛税をちょうする風もなく、治水がすすんでいるせいか、湖畔の青田は見わたすかぎり生き生きとよく肥えている。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二発もつゞいて同じ方角から飛んで来て、一弾は一弾より正確であったのにちょうしても、決して偶然の弾丸だまでないことはたしかである。
ひとるはかたくしてやすく、みずかるはやすくしてかたし、ただまさにこれを夢寐むびちょうもっみずかるべし、夢寐むびみずかあざむあたわず」と。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
期せずして市民の信頼を博し、警視庁でも、難事件が起ると、一応は必ず宗像研究室の意見をちょうするという程になっていた。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
わがくに皇統連綿、天地ときわまりなし。しかして上世のふみけみするに、天孫降臨すというもの、これを今日にちょうすれば、はなはだ疑うべきがごとし。
教門論疑問 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)
一体性欲というものが人の生涯にどんな順序で発現して来て、人の生涯にどれだけ関係しているかということをちょうすべき文献ははなはだ少いようだ。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
私の経験にちょうすると、その多くが意気地いくじなしで、インテリ風で、秀才型で、その実、気のいた人間でない場合が多い。
河豚は毒魚か (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
去れど余の学力はこれを過去にちょうして、これより以後さほど上達すべくもあらず。学力の上達せぬ以上は学力以外にこれを味ふ力を養はざるべからず。
『文学論』序 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そうしてその脅迫状が偽である事は彼自身が出した覚えがないのにちょうしてあきらかですから、その使つかいであるここに居られる方に再び脅迫状を送ったのです。
急行十三時間 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
江戸から遠くここにきたって親しく井の水をんだか否か。文献のちょうすべきものがあれば好事家こうずかの幸である。
葛飾土産 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それと申しますのが、わたくしが科学者であるというのを口実こうじつにして、わたくしには関係のない事柄にまで科学的意見をちょうされたことが、随分と多うございますのです
省線電車の射撃手 (新字新仮名) / 海野十三(著)
一切万事わがこころを押通さんとするは傲慢頑愚のちょうにして我らのよろしく注意すべきことなり。
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
主上とはかりたてまつり、大塔宮様が積極的に北条氏討伐のご計画を進め、まず六波羅を攻めようものと、ひそかに北畠具行ともゆきをして、諸国に兵をちょうさせたのは、七月下旬からのことであった。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
磯九郎如きものを見出すことのかたくないことにちょうしても明らかであります。
古学に対する彼の学説は必ず大いに聞くべきものありしならんも、今日において遺稿などのそれちょうするに足るものなきは遺憾なり。今その歌について多少その主義を表したりと思ふものを挙げんに
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
即ち、夜半の覚醒が、性的の衝動の高潮と切実なる関係を有せる事実にちょうする時は、当時の呉一郎の精神状態は、或る危機の最高潮にひんしおりたるものなる事、前記の告白によって明かなるべし。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
異状の天色てんしょくはますます不穏ふおんちょうを表せり。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「それよりは、当初の名分どおり、税をちょうして立帰ったほうが、公辺へは、よい御首尾ではあるまいか。数日ここに構え込んで」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ねらったのであるその点は理性的打算的であったさればある場合には負けじ魂がかえって貪慾どんよくに変形し門弟よりちょうする月謝やお膝付ひざつきのごとき
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
この事実にちょうすれば温和を主とするとはいえ、必ずしも不正なる要求に対しても唯々諾々いいだくだく、これに盲従もうじゅうせよとの意ではなかったことがわかる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
これは、後程のちほど彼女が出逢ったある危機にける、想像を絶した冷静さにちょうしても、外に判断の下し方はない様に見えるのだ。
お勢登場 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
(先生にててそういう事を書いても仕方がないとも思ったし、前例にちょうしてみると、とても返事をくれそうになかったから)。私はさびしかった。それで手紙を書くのであった。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
更に反対の方面を見ると、信仰もなくしてしまい、宗教の必要をも認めなくなってしまって、それを正直に告白している人のあることも、或る種類の人の言論にちょうして知ることが出来る。
かのように (新字新仮名) / 森鴎外(著)
我邦わがくに現代における西洋文明模倣の状況をうかがひ見るに、都市の改築を始めとして家屋什器じゅうき庭園衣服に到るまで時代の趣味一般の趨勢にちょうして、うたた余をして日本文華の末路を悲しましむるものあり。
浮世絵の鑑賞 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
の国々が従来未開国みかいこくに対するの筆法ひっぽうちょうして想像そうぞうするにるべし。
これは一種の探偵術ですが、従来じゅうらいの例にちょうしても、所持品からの推理によって昔、あなたが住んでいられた世界や職業や、それから家族のことなどを、立派に探しだすことに成功した例があるのです
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかれども彼の理想と信仰とは確固として動かず、彼は彼の事業の永続すべからざるを知るといえどもなお彼の最初の理想にむかって進み、内乱再起のちょうあるをも顧みず、彼の勝算全く絶えしにも関せず
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
その佐吉から京都大坂の世情をちょうしてみると、信雄に端を発したこんどの戦争は、たれも秀吉対信雄とは考えていない。秀吉対家康と見ているのだ。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とあるのにちょうして明かで、その頃の京都の市中から馬を走らせて行く分には、左程さほどの道のりではなかったであろう。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
これは我々が社会を見ても、あるいは各自の友人の履歴りれきちょうしても、必ずその例にとぼしからざるを感ずる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
余が某氏のげんに疑をさしはさむのは、自分に最も密接の関係のある文壇の近状にちょうして、決してそうではあるまいとの自信があるからである。政府は今日までわが文芸に対して何らの保護を与えていない。
文芸委員は何をするか (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
またこんな混濁こんだくの底から実は必死な次代の良心が萠芽ほうがしつつあることも、史にちょうせば期待されないことでもない。
人間山水図巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
堺附近の人心にちょうしても、本能寺変の一事が、いかに天下を震駭しんがいさせたかは、想像以上なものがある。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、野につるそんな声に、正成は酔ったであろうか。自身の武勲におごったろうか。どんな史にちょうしても、このときの正成に、それらしき風はみじん見あたらない。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
という特別な叡慮えいりょも辞句にはいっていた。またそれにちょうしてもこれ以外のあまたな将士にもそれぞれ何かのかたちで嘉賞の沙汰が一せいにおこなわれたのはいうまでもないだろう。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
総軍約三万は——かれの領する甲斐かい信濃しなの駿河するが、遠州の北部、三河東部、上野こうずけの西部、飛騨ひだの一部、越中の南にまでわたる、およそ百三十万石の地からちょうせられた将兵であった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……したが、今度という今度の一戦では、いやでもこれをさいごに世の覇者はしゃを決し、いわば大風一過たいふういっかの世となるだろう。そしたらむごい兵糧米の加役などもちょうするにはおよばなくなる。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「——初春には、なお第三陣、四陣のご軍勢をも、ちょうすることになりましょう」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これは現下の中国の人心にちょうしても明らかな批判である——というのであった。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それのはっきりしている上層中流の人士でもかつての自国の歴史にちょうして、その時代時代に適応した解釈を下し、自分たちの人為をすべて天象や瑞兆ずいちょうのせいにして、いわゆる機運をかも
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それと、見のがせないのは、古記にちょうしてみると、寄手の総退却となって
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今では手に手を取って他国へ駈落ちしている事実にちょうしても証明できる——
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ま、何かと、よんどころない軍需の御用はちょうせられておりますなれど」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とあるにちょうしても、この日すでに東征の用意があったのはあきらかだ。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むしろ——義貞死ス——との悲報が入ってからの後醍醐は、つねにもまさるような御音吐ごおんとで、夜もおそくまで、終日ひねもす、人々の意見をちょうしては、次の挽回策に、心身のお疲れも忘れているかのようだった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、意見をちょうした。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)