御懇意ごこんい)” の例文
今度私が此処ここに現われたのは安倍能成あべよししげという——これも偉い人で、やはり私の教えた人でありますが——その人が何でも弁論部の方と御懇意ごこんいだというので
模倣と独立 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
聞いたものはみな無念に思い、三河以来、御懇意ごこんいをねがった譜代の家来も、一朝にしてかような取扱いを受けるのかと、行末をはかなんでおいとまを願うものが出てきた。
鈴木主水 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
あらをりに見染て箇樣々々かやう/\息子せがれが寢言兩親がことより自己おのれが來りたれどたゞ一向ひとむきにも言入かね實は斯々かく/\はからひて御懇意ごこんいになり此話しを言出したりといと事實じじつを明してのべたるに主個あるじはた横手よこて
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
御懇意ごこんいあひだひ、それにです。貴方あなたわたしのためには恩人おんじんでおいでなさる。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
手のさき天窓あたまさきそろへ、どうめて閑雅しとやか辞儀じぎをして、かね/″\おまねきにあづかりました半田屋はんだや長兵衛ちやうべゑまうす者で、いたつて未熟みじゆくもの、此後こののちともお見知みしかれて御懇意ごこんいに願ひますとふと
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
とゝさま二の御懇意ごこんいとてはづかしき手前てまへ薄茶うすちやぷくまゐらせそめしが中々なか/\物思ものおもひにて帛紗ふくささばきのしづこゝろなくりぬるなりさてもお姿すがたものがたき御氣象ごきしようとやいま若者わかものめづらしとて父樣とゝさまのおあそばすごとわがことならねどおもあかみて其坐そのざにも得堪えたへねどしたはしさのかずまさりぬりながら和女そなたにすらふははじめてはぬこゝろ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かゞめて見世へ這入はひり我等は元備前岡山にて御懇意ごこんいに致したる者なり何卒なにとぞ御亭主ごていしゆに御目に懸りたしと云ければ店の者は奧へ到り主人久藏に斯と告いざ勝手口より御通り有べしと案内あんないするにぞ吾助は勝手口に到り此處にて草鞋わらぢなどを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
も申上させんとおもひつれて來し譯なり此樣又機の好幸ひなる事もなし併し月日の立のは早き者にて今年にて十八年以前の事と委細くはしくはなしければ清兵衞扨は然樣なることにて御知り人になりしか成程なるほどえんと云者は不思議ふしぎなる者なりはなして見れば貴樣たちは親分子分私しは又後藤先生とはだい御懇意ごこんいなりと云つゝ不※ふと四邊あたり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)