土用干どようぼし)” の例文
やあきたねどぶだ。おそろしい石灰いしばひだ。ひどみちだ。三階さんがいがあるぜ、浴衣ゆかたばかしの土用干どようぼしか、夜具やぐうら眞赤まつかな、なん棧橋さんばし突立つツたつてら。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
をとこみんなあんなものおほいからとおふくわらすに、わるあてこすりなさる、みゝいたいではいか、れはえても不義理ふぎり土用干どようぼしこと人間にんげん
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さながら土用干どようぼしの如く部屋中へ置き散らして、寝ころびながら、手あたり次第に繰りひろげては耽読たんどくした。
秘密 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
臆病者も頗英雄になった気もちだ。夏の快味は裸の快味だ。裸の快味は懺悔ざんげの快味だ。さらけ出したからだ土用干どようぼし霊魂れいこん煤掃すすはき、あとの清々すがすがしさは何とも云えぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
友「それは何より結構、へえ御新造様、おや今日こんにちはお土用干どようぼしでござりますか、これは皆旦那様のお品々、思い出すも涙の種、御新造様世の中には神も仏もないのでございましょうか…これも旦那様のお品でございますな」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
よろい著てつかれためさん土用干どようぼし 去来
俳句上の京と江戸 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
あるひいはく——禮服れいふく一千兩いつせんりやう土用干どようぼし——大禮服たいれいふく東京とうきやう出來できた。が、ばういたゞき、けんび、手套てぶくろしぼると、すわるのがへんだ。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
買込んだ呉服の嬉しさ次手ついでに、箪笥を払った、ひまふさげの、土用干どようぼしの真似なんでしょう。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
本來ほんらいなら、別行べつぎやうしたゝめて、おほい俳面はいめんたもつべきだが、惡口わるくち意地いぢわるいのがぢき近所きんじよるから、謙遜けんそんして、二十字にじふじづめのなかへ、十七字じふしちじ割込わりこませる。いはく、千兩せんりやう大禮服たいれいふく土用干どようぼし
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)