倶楽部くらぶ)” の例文
旧字:倶樂部
倶楽部くらぶの音頭を取って居るのは、子爵玉置たまおき道高氏、正面の安楽椅子いすにもたれて、先刻から立て続けに葉巻を吸って居るのがその人です。
古城の真昼 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
ところが夫人おくさん、貴女はそれによって艇長が属していた快走艇ヨット倶楽部くらぶ——王立カリンティアン倶楽部の三角旗を指摘したのでしたね。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
手のいた折助連中はその倶楽部くらぶである八日市の酒場に陣取って、これから隊を成して馬場へ押し出そうというところであります。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
小生は先般、丸の内倶楽部くらぶ庚戌会こうぼくかいで、短時間拝眉はいびの栄を得ましたもので、貴兄と御同様に九州帝国大学、耳鼻科出身の後輩であります。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
春三月に竹柏ちくはく会の大会が、はじめて日本橋倶楽部くらぶで催されたおりにはっきりと楠緒女史はあの方だと思ってお目にかかりました。
大塚楠緒子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
いまもあるだらうと思ふが、その頃私は千日前の大阪劇場の地下室にある薄汚い将棋倶楽部くらぶへ、浮かぬ表情で通つてゐた。
聴雨 (新字旧仮名) / 織田作之助(著)
心のうちで大弱りに弱ってると、いよいよ試合の日になった。倶楽部くらぶのテニスコートが、この日の試合場だ。審判官しんぱんかん一人ひとりときめてフランクがなる。
小指一本の大試合 (新字新仮名) / 山中峯太郎(著)
「そうね、こう死亡率が多いとゆゆしい問題だわね。仏蘭西フランスのアルプス倶楽部くらぶは、登山者に落下傘パラシュウトを貸す、なんて智慧を持ち合わしていないのかしら」
小泉氏と明智探偵とは、同じ社交倶楽部くらぶの会員だったものですから、懇意こんいというほどではなくても、二、三度話しあったこともあるあいだがらでした。
妖怪博士 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ばんになると倶楽部くらぶっては玉突たまつきをしてあそぶ、骨牌かるたあまこのまぬほう、そうして何時いつもおきまりの文句もんくをよく人間にんげん
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
これもやはりざあざあ雨の降る晩でしたが、私は銀座のある倶楽部くらぶの一室で、五六人の友人と、暖炉だんろの前へ陣取りながら、気軽な雑談に耽っていました。
魔術 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
第一には、君が昨夜倶楽部くらぶから帰って来た時は、君の左の手の指のあたりに、白いチョークがついていたこと。
ドアというドアは閉じてあった事が無い。訪問客は一人もない。その生活ははなはだしく単調で機械的になっていた。彼は午後に議会へ行き、夜は倶楽部くらぶへ行く。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
「そんな下等な者じゃないと云うに、まあ好い、これから倶楽部くらぶへ往ってビールでも飲みながら話そう」
水魔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
秋濤の宅は神港しんこう倶楽部くらぶの近くにあつた。そのあくる日から皆はいつもの刻限よりは少し早目に其処そこに集まつた。
夫婦か恋人のように、男がエリザベスの腕を取って、二人は付近の社会党倶楽部くらぶの方角へ歩き去った。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
加能氏が牛屋ぎゅうや下足番げそくばんをされたと云うのを何かで読んでいたので、よけいに心打たれたのでしょう。私はその頃新潮社から出ていた文章倶楽部くらぶと云う雑誌が好きでした。
文学的自叙伝 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
ほんとに仏蘭西製のこの種の豪のモノが世界じゅうに散らばってることも満更まんざらうそじゃあないんだが、その多くは、女中つきで倶楽部くらぶなんかに出没するグラン・オペラ的な連中で
金時計は当らないで、こんなものがあたったと云って、たもとから倶楽部くらぶ洗粉あらいこを一袋出した。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
丸の内辺の某倶楽部くらぶを預って暮したが、震災のために、立寄ったその樹の蔭を失って、のちに古女房と二人、京橋三十間堀裏のバラックだてのアパアトの小使、兼番人でわびしく住んだ。
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
神保町じんぼうちょうのとあるカフェーの裏二階、夜分だけ定連を借り切って、何時いつの間にやら出来たのが、この有名なる「無名倶楽部くらぶ」です。
古城の真昼 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
ああそれは、王立ロイヤルカリンティアン快走艇ヨット倶楽部くらぶ員としての、面目だったのでしょうか。いいえいいえ、私はけっしてそうとは信じません。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
僕が或る珍しい倶楽部くらぶに紹介してやったので、そのお礼の意味で提供してくれたんですがね。お思い当りになりませんか
けむりを吐かぬ煙突 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
洗濯代せんたくだいばかりでなく、倶楽部くらぶの代金まで、まるではらわなくなった。この倶楽部くらぶというのは、学生の寄宿舎なのだ。名前を「ラサハ倶楽部くらぶ」という。
小指一本の大試合 (新字新仮名) / 山中峯太郎(著)
五人が六人——十人——二十人と殖えて、三ツ目錐の屋敷が、界隈の子供たちの倶楽部くらぶになってきたことをも、主膳は一向とがめる模様がありませんでした。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
大阪美術倶楽部くらぶで催された故清元きよもと順三の追悼会ついたうゑに、家元延寿太夫えんじゆだいふが順三との幼馴染おさななじみおもひ出して、病後のやつれにもかゝはらず、遙々はる/″\下阪げはんして来たのは美しい情誼であつた。
……そのお茶の会っていうのは、SSヨット倶楽部くらぶの連中の会で、気障きざなシャナシャナした男や女が大勢いるんだって。……これが、『虚栄の市へ行く』ということなの
キャラコさん:07 海の刷画 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
社会党倶楽部くらぶ——正式には、同党イースト・エンド支部会館の看板をあげていた——の在る一構内に消えてから、二十分たつかたたないうちに、その会館の窓下の中庭で
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
オテル・ドュ・コロウヌと看板を上げた村の倶楽部くらぶみたいなささやかな居酒屋がある。
踊る地平線:04 虹を渡る日 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
私はこの先生に文章倶楽部くらぶと云うのを毎月借りていた。大井先生はまた私に色々な本を貸してくれた。広津和郎ひろつかずおの『死児を抱いて』と云う小さい本なぞ私は愕きをもって読んだものであった。
私の先生 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
所が倶楽部くらぶへでもくかと思ひのほか、誠吾はうなぎからうと云ひ出した。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
知事の君をはじめとして、県下に有数なる顕官、文官武官の数を尽し、有志の紳商、在野の紳士など、尽く銀山閣といふ倶楽部くらぶ組織のやかたに会して、およそ半月あまり趣向をこらされたるものに候よし。
凱旋祭 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かれ非常ひじょう読書どくしょこのんで、しばしば倶楽部くらぶっては、神経的しんけいてきひげひねりながら、雑誌ざっし書物しょもつ手当次第てあたりしだいいでいる、んでいるのではなく間合まにあわぬので鵜呑うのみにしているとうような塩梅あんばい
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「宿は日本人倶楽部くらぶに話してある。半月でも一月でも差支えない。」
湖南の扇 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そして、猟奇の徒が犯罪の一つ手前の刺戟物として、好んで試みる所の、例の猟奇倶楽部くらぶという、変な遊戯をさえ始めた。だが、これとても、結局は彼の退屈を一層救い難きものにしたばかりである。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
類は友で集まった倶楽部くらぶ員達は、華族の次男三男坊、金持の息子、文士、美術家、俳優と言ったたぐいばかり、貧乏人は一人もありませんが
古城の真昼 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
いろんなステキな遊びをさせる倶楽部くらぶだの、ホテルだのいうものが、大きな街に行くとキットどこかに在るんですってさあ……つまりお金さえあれば
支那米の袋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ポールはおとなしくなって、ラサハ倶楽部くらぶは「友だちの愛」でさかんになるし、倶楽部長フランクは大よろこびさ。
小指一本の大試合 (新字新仮名) / 山中峯太郎(著)
わしは、王立ロイヤルカリンティアン快走艇ヨット倶楽部くらぶ員の一人として、かつてフォン・エッセン男爵に面接の栄を得たものでありますが、儂ですらも、これまではさまざまな浮説に惑わされ
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
留守番をしている時分には、米友の周囲がこれらの子供連の倶楽部くらぶになったものであります。子供連は思いがけなくも米友の姿をここに見出したものだから、ワイワイと集まって来て
あの(極楽荘)はヴイコの町長の夏別荘だったんですが、この五年前からぶっつり来ないようになったので、まあ、ずるずるべったりに、部落の共同の倶楽部くらぶということになっていたんです。
バッハ・カンタータ倶楽部くらぶの演奏で、一枚だけ手に入れることは困難であろうが、優れたレコードである。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
お客の居ない間の店の中はまるで秘密の倶楽部くらぶか何ぞのように、陰気な静けさで充たされていた。
鉄鎚 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
主人の神尾主膳かみおしゅぜんというのは三十越したばかりで、父が死んでの後はいい気になって、旗本の次男三男という始末の悪いやくざ者を集めて来ては、おのが家を倶楽部くらぶにしてさんざんの振舞ふるまいですが
あくる日の朝、警視庁の記者倶楽部くらぶで、花房一郎はニコニコし乍ら此問に答えました。
踊る美人像 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
乗馬倶楽部くらぶの者だと云って新しい藁切庖丁わらきりぼうちょうを一ちょう買って行った。
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それは縄暖簾なわのれんの大きいので、彼等の倶楽部くらぶであります。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)