似寄によ)” の例文
が、西洋人の書いたものに余り似寄によりの話を見た為、とうとうそれなりになつてしまつた。それなりになつてしまつたのは勿論天下の為に幸福である。
蒐書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
私は寺男か住職かどちらかが石川五郎の写真に似てはいないかと、二人の顔を代わる代わるじっと見つめましたが、少しも似寄によったところはありませんでした。
墓地の殺人 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
『ナニへびだ、へびだ!』と繰返くりかへしましたがはとは、以前まへよりも餘程よほどやさしく、其上そのうへ可哀相かあいさう歔欷すゝりなきまでして、『わたし種々いろ/\經驗ためしたが、へび似寄によつたものはほかなにもない!』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
これは後で知ったことであるが、この老主人は何でも浅草公園附近の待合まちあいに入りびたって、似寄によった連中と夜昼ぶっ通しに賭博とばくをしたり飲んだりして日を送っているらしかった。
近隣の水を当座とうざもらって使ったが、何れも似寄によった赤土水である。墓向うの家の水を貰いに往った女中が、井をのぞいたらごみだらけ虫だらけでございます、と顔をしかめて帰って来た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
昨夕さくゆう横濱よこはま入港にふかうせし英國エイこくぼう郵船ゆうせんは四五にちぜん夜半やはんきたボル子ヲたう附近ふきんにて日本につぽん國旗こくきかゝげし一だい帆走船ほまへせんみとめしよしにて、そのふね形状等けいじようとうあだか大佐たいさ帆走船ほまへせん似寄によりたるところあれば
近頃ちかごろ御米およね時々とき/″\夜明前よあけまへくるまおといておどろかされることがあつた。さうしてそれおもはせると、何時いつ似寄によつた刻限こくげんなので、必竟ひつきやう毎朝まいあさおなくるまおなところとほるのだらうと推測すゐそくした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いて主人に同情をすれば、あるいはそれは静ではなく、南朝の姫宮ひめみや方であったか、戦国頃の落人であったか、いずれにしてもこの家が富み栄えていた時分に、何か似寄によりの事実があって
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それが為に日没後の明るさが常の真昼の明るさと似寄によっている。
暗黒星 (新字新仮名) / シモン・ニューコム(著)
「偽物さ。ひとの縄張りへ無断で似寄によりの店を出したんだもの」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
其翌年の春、彼女は同郷どうきょうの者で姓も同じく商売も兄のと似寄によった男に縁づいたことを知らして来た。秋十月の末、ある日丸髷まるまげった血色けっしょくの好い若いおかみさんが尋ねて来た。とめやであった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)