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ふりがな文庫
“
下司
(
げす
)” の例文
少し
下司
(
げす
)
なところはあったが、お客にはしきりに受けていた。馬道の話し口が下司になるたび聴いていて圓生は烈しく眉をしかめた。
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
「いくらいっても聞きわけがない、叔父にむかって、いよう、などという挨拶があるか。……たしなまッせえ、この
下司
(
げす
)
ものめが」
顎十郎捕物帳:12 咸臨丸受取
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
所詮
(
しょせん
)
牛をそらすくらいならば、なぜ車の輪にかけて、あの
下司
(
げす
)
を
轢
(
ひ
)
き殺さぬ。怪我をしてさえ、手を合せて、随喜するほどの
老爺
(
おやじ
)
じゃ。
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
なぜこんな余計な仮定をして平気でいるかというと、そこが人間の
下司
(
げす
)
な
了簡
(
りょうけん
)
で、我々はただ生きたい生きたいとのみ考えている。
文芸の哲学的基礎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そうすると
色奴
(
いろやっこ
)
とか申してな、
下司
(
げす
)
下郎の
分際
(
ぶんざい
)
で
金糸
(
きんし
)
の縫いあるぴか/\した衣装で、お供に
後
(
おく
)
れたという見得で出てまいります
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
▼ もっと見る
熊谷三郎兵衛は
下司
(
げす
)
な言葉を残して、廊下に飛出しました。
其処
(
そこ
)
から通ずるバルコニーの方から、悪魔の笑いが響いたようです。
笑う悪魔
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
何という楽しさだろう、何という自由さであろう。それを眺めながら私は、「
下司
(
げす
)
の貧乏人」でない今の私の境遇が悲しかった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
それがある
下司
(
げす
)
野郎から侮辱されてるのを見ると、彼は我を忘れて
激昂
(
げっこう
)
した。もはや芸術上の問題ではなく、名誉の問題だった。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
高価な着物を着流しに、いかにも結構な楽隠居という様子であるが、いかにも人品が
下司
(
げす
)
である。女中のタケヤにきいてみた。
明治開化 安吾捕物:06 その五 万引家族
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
下司
(
げす
)
な
所為
(
まね
)
は決して
做
(
し
)
なかった。
何処
(
どこ
)
の家の物でなければ喰えないなどと贅をいっていた代りには通人を気取ると同時に紳士を任じていた。
斎藤緑雨
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
しかるに、今宿へ戻って
検
(
しら
)
べてみると、庄左衛門は他人の金品まで持ち逃げしている! これは
下司
(
げす
)
下郎
(
げろう
)
の
仕業
(
しわざ
)
で、士にあるまじきことだ。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
素人
(
しろうと
)
ともつかず、
玄人
(
くろうと
)
ともつかず、娘でなく、年増でなく、
下司
(
げす
)
ではいけないが、そうかといって上品ぶるのはなおいけない。
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
へへねえ。こりゃまたどうしたんですかい。やけにまた
下司
(
げす
)
なものが出てきたじゃござんせんか。まさかに、この侍、
棟梁
(
とうりょう
)
を
右門捕物帖:24 のろいのわら人形
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
かつら 鎌倉山に時めいておはしなば、日本一の將軍家、山家そだちの我々は
下司
(
げす
)
にもお使ひなされまいに、御果報拙いがわたくしの果報よ。
修禅寺物語
(旧字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
この不審が、もっとも露骨にささやかれているのは、
下司
(
げす
)
の陰口といわれる通り、何といっても、
下部
(
しもべ
)
の仕え
人
(
びと
)
たちである。
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
……又膝栗毛で
下司
(
げす
)
ばる、と
思召
(
おぼしめ
)
しも恥かしいが、こんな場合には絵言葉
巻
(
まき
)
ものや、哲理、科学の
横綴
(
よことじ
)
では間に合わない。
遺稿:02 遺稿
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
斯うと知ったら借金を質に入れても千坪たんまり買って置くのだったのに、
下司
(
げす
)
の智恵は後からで、今更何とも仕方がない
好人物
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
高徳な人の鼻の穴が正面から底まで見えたり、
下司
(
げす
)
張った奴の鼻の恰好が芝居の殿様のようであったりするといったような実例はザラにあります。
鼻の表現
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
おのが手にはいらない物は
他人
(
ひと
)
にもとらせたくないのが
下司
(
げす
)
の人情、金を持って瓦町へ行くとは真っ赤なうそで、おしんやおさよをちょろまかし
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
今は宿取れとて、人々あかれて宿を求むる所、はしたにていとあやし(賤)げなる
下司
(
げす
)
の小家なんあると云ふに、……
間人考
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
まして私が二人の間にわり込んで、おれの生き方を水滴の数に換算すればこのぐらいだろうなどといったとしたら、なおなお
下司
(
げす
)
なことになるだろう。
井伏鱒二によせて
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
吉弥の
悪口
(
あっこう
)
をつくのは、あんな
下司
(
げす
)
な女を僕があげこそすれ、まさか、関係しているとは思わなかったからでもあろうが、それにしては、知った以上
耽溺
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
自然相手の仁を見た
下司
(
げす
)
っぽい語り口になったわけ、しかし、そんな語り口でしか私には自分をいたわる方法がなかったと、言えば言えないこともない。
アド・バルーン
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
チッバ やア、
下司
(
げす
)
下郎
(
げらう
)
を
敵手
(
あひて
)
にして
汝
(
おぬし
)
は
劍
(
けん
)
を
拔
(
ぬ
)
かうでな? ベンヺーリオー、こちを
向
(
む
)
け、
命
(
いのち
)
を
取
(
と
)
ってくれう。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
私は人間の仕合せは色の白いこと以上にないと思つた。
扨
(
さて
)
はませた小娘のやうに
水白粉
(
みづおしろい
)
をなすりつけて父に見つかり、父は
下司
(
げす
)
といふ言葉を遣つて叱つた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
相場に手を出せば失敗を重ね、高利を借りれば恥をかき、
小児
(
こども
)
と見くびりし武男には
下司
(
げす
)
同然にはずかしめられ、ただ一
親戚
(
しんせき
)
たる川島家との通路は絶えつ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
法師二『言葉も知らぬ
下司
(
げす
)
なおやじ
奴
(
め
)
。その上に
刃
(
やいば
)
なぞ抜身で
携
(
さ
)
げ、そもそも
此処
(
ここ
)
は
何
(
いず
)
れと心得居る。智証大師伝法
灌頂
(
かんじょう
)
の道場。天下に名だたる霊域なるぞ』
取返し物語
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
この男に良く似た顔を私は小学生の時分に、福岡の水族館で見たことがある。女中が
下司
(
げす
)
な調子でそれを冷かした。悲しいのも無理ないわね。ほの字だもの。
風宴
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
じぶんこそ
下司
(
げす
)
のこんじょうだったと、ありがたなみだにかきくれまして、おぼえずおこえのする方を両手をあわせておがみましたが、そのときおくがたは
盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
たまにゃ、一流もよろしい。が、然し、うまい!って味は、意外にも、
下司
(
げす
)
な味に多いのである。だから、通は、下司な、下品な味を追うのが、正当だと思うな。
下司味礼賛
(新字新仮名)
/
古川緑波
(著)
「きさま、何してやがる、
下司
(
げす
)
めが?」と言う。——「子供を泣かしといて、自分は寝てるのか?」
ねむい
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
こうまで殺風景な、
下司
(
げす
)
な部屋でなくてもいいんじゃないか。俺はそれを言いたかったのだ。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
「それぁね、」と乗り出して、「お前みたいな子供に言ったって仕様がないけど、アリもアリも
大
(
おお
)
アリさ!」どうも叔母さんの言葉は、ほんものの
下司
(
げす
)
なんだから閉口する。
正義と微笑
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
おれは
下司
(
げす
)
ではあるが、
御扶持
(
ごふち
)
を戴いてつないだ命はお歴々と変ったことはない。殿様にかわいがって戴いたありがたさも同じことじゃ。それでおれは今腹を切って死ぬるのじゃ。
阿部一族
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「へ、ゝ。」といふだけで、あとは
所
(
しよ
)
つ
中
(
ちう
)
默
(
だま
)
り込んでばかりゐる。どんな女だかまだ見もしないが、どうせこのあたりの汚い
家
(
うち
)
の子で、行儀も何も知らない、
下司
(
げす
)
な子らしかつた。
赤い鳥
(旧字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
下司
(
げす
)
の智慧はあとからで、いまとなってみれば、キマリのわるいことだらけである。
浅草風土記
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
自分は撰ばれた者として民族的に生活的に人一倍
下司
(
げす
)
っぽい優越感を持っている。
天馬
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
だつて、云ふことが
下司
(
げす
)
なの、——ネエさん、東京だらう。どうも田舎の
女
(
ひと
)
にしちや、様子がイキだと思つた——かうなの。女中の云ふことがいゝわ。——旦那も東京ですか——だつて。
驟雨(一幕)
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
まして九つより『
栄華
(
えいが
)
』や『
源氏
(
げんじ
)
』手にのみ致し候少女は、大きく成りてもます/\王朝の
御代
(
みよ
)
なつかしく、
下様
(
しもざま
)
の
下司
(
げす
)
ばり候ことのみ
綴
(
つづ
)
り候
今時
(
いまどき
)
の読物をあさましと思ひ候ほどなれば
ひらきぶみ
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
青ギスの乗合舟の船頭で、ボロ服を着たきたない爺さんとなじみになり、なんの遠慮もなく、いろいろ
下司
(
げす
)
なはなしまでしてきて、一ヵ月も過ぎてから、その人が永田青嵐居士とわかった。
江戸前の釣り
(新字新仮名)
/
三遊亭金馬
(著)
卑俗低調の
下司
(
げす
)
趣味が流行して、詩魂のない末流俳句が歓迎された
天明
(
てんめい
)
時代に、独り芭蕉の精神を
持
(
じ
)
して孤独に世から超越した蕪村は、常に
鬱勃
(
うつぼつ
)
たる不満と
寂寥
(
せきりょう
)
に耐えないものがあったろう。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
「四斗
樽
(
だる
)
の尻を抜くような
法螺
(
ほら
)
をこくでねえ、面あこそ生っ白くて若殿みてえだが、なんかの時にあ折助より
下司
(
げす
)
なもの好みをするだあ、家来持ちが聞いて
呆
(
あき
)
れるだよ、この
脚気
(
かっけ
)
病みの
馬喰
(
ばくろう
)
め」
若殿女難記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
うんと
上手
(
じょうず
)
に話をしなければならないのに、あの女のやり方がまずいものだから、あの
他所
(
よそ
)
者のばか女が、高慢ちきな
下司
(
げす
)
女が、あのやくざないなか者が、ただ来ないことに決めてしまったばかりか
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
下司
(
げす
)
の中へ連れ出そうと云うのではありません。1640
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
戲
(
たは
)
れ浮かれて鄙びたる
下司
(
げす
)
のしらべに忘るれど
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
「うるさい
下司
(
げす
)
だな、何を云うか!」
十二神貝十郎手柄話
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それから
賑
(
にぎやか
)
な往来へ出ると、ぽつぽつ雨が降つて来た。その時急にさつきの女と、以前
遇
(
あ
)
つた所を思ひ出した。今度は急に
下司
(
げす
)
な気がした。
雑筆
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「だいそれたことを申すなッ。かりにもご三家のお殿さまからお
寵愛
(
ちょうあい
)
うけているお手かけさまだ。
下司
(
げす
)
下郎の河原者なんかとは身分が違わあ」
右門捕物帖:16 七化け役者
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
「うるさい。うるさいっ。
下司
(
げす
)
めが、まだ
吠
(
ほ
)
えおるか。……ええ、時遅れては大事を
逸
(
いっ
)
す。源右衛門、こやつを、引離せ」
茶漬三略
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
だが、操さんは私のような
下司
(
げす
)
な貧乏人ではなかった。祖母を初め、岩下家は上を下への大騒ぎでこの珍客をもてなした。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
“下司”の解説
下司(げし/げす)とは、中世日本の荘園や公領において、現地で実務を取っていた下級職員のこと。惣公文(そうくもん)とも呼ばれる。
(出典:Wikipedia)
下
常用漢字
小1
部首:⼀
3画
司
常用漢字
小4
部首:⼝
5画
“下司”で始まる語句
下司女
下司根性
下司張
下司男
下司下人
下司下郎
下司口
下司奴
下司床
下司扱