上靴うわぐつ)” の例文
丁度ちょうどそのときにわはいってたのは、いましもまちあさって猶太人ジウのモイセイカ、ぼうかぶらず、跣足はだしあさ上靴うわぐつ突掛つッかけたまま、にはほどこしちいさいふくろげて。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そのでこぼこの床の上には、ほこりがこびりついて、かつてほうきをあてられたこともなく、古い上靴うわぐつや靴やきたないぼろなどがあちこちに取り散らされていた。
彼は大きな青い上靴うわぐつを引きずるようにして足を運ぶ。ルイザは近寄ってはいけないと彼に手真似まねをする。
その静寂をおして堂内へはいることははばかられました。千恵は上靴うわぐつの音を忍ばせて、こつそり廊下の小窓へ寄つて、唐草模様の銅格子ごうしごしにそつと堂内をのぞき込みました。
死児変相 (新字旧仮名) / 神西清(著)
仏蘭西フランス風の女用上靴うわぐつと一しょに端近はしぢかの床にころがっているのを発見したのだが、這入って、黙って手に取ってみると、私は妙に身体からだじゅうがしいんと鳴りをしずめるのを感じた。
踊る地平線:05 白夜幻想曲 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
いつでもしまのフラネルをきて、むくむくした上靴うわぐつを足に穿いて、その足を煖炉ストーブの中へ突き込むくらいに出して、そうして時々短い膝をたたいて——その時始めて気がついたのだが
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
エリス帰りぬと答うる間もなく、戸をあららかに引き開けしは、半ばしらみたる髪、しき相にはあらねど、貧苦のあとぬかにしるせし面の老媼にて、古き獣綿じゅうめんの衣を着、汚れたる上靴うわぐつ穿きたり。
舞姫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
けれども、侍女は、まずその前に、木の上靴うわぐつにはきかえました。——
上靴うわぐつ(ゴムの防寒靴だ) 二八(百万足) 七五( 〃 )
ソヴェト文壇の現状 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
マリユスがジャン・ヴァルジャンの代わりになった時、コゼットはもう神を恨まなかった。彼女は白繻子しろじゅす上靴うわぐつをつけた小さなやさしい足を、マリユスの足の上にのせた。
かれまちまわるに病院服びょういんふくのまま、みょう頭巾ずきんかぶり、上靴うわぐつ穿いてるときもあり、あるい跣足はだしでズボンした穿かずにあるいているときもある。そうしてひとかどや、店前みせさきっては一せんずつをう。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
サコスキの上靴うわぐつをはき、毛のはいった外套がいとうを着、大司教のような様子をし、門番のついた家の二階に住み、松露を食い、正月には四十フランもするアスパラガスを食いちらし、豌豆えんどうを食い
病院服びょういんふく下着したぎ上靴うわぐつなど、小腋こわきかかえて。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
上靴うわぐつの中に逃げ込む白い足、鏡の前にも人のひとみの前かのように身を隠す喉元のどもと、器具のきしる音や馬車の通る音にも急いで肩の上に引き上げられるシャツ、結わえられたリボン、はめられた留め金