上總かづさ)” の例文
新字:上総
その日は主人の神津右京は、金策きんさくのため上總かづさの知行所へ行つて留守。用人の佐久間仲左衞門、代つて平次と八五郎に應對しました。
小六ころくところによると、二三日前にちまへかれ上總かづさからかへつたばんかれ學資がくし此暮このくれかぎどくながらしてれないと叔母をばからまをわたされたのださうである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
この東歌は、人も知るごとく上總かづさの國の歌として、卷十四に載せてある雜歌である。わたしはこの歌を感ずることは出來ても、十分に説き明すことは出來ない。
桃の雫 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
藤澤へとまらんとて程なく宿屋へつきたりけり然るに彼道連みちづれに成し男はもと上總かづさ無宿むしゆくにて近頃東海道を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
江州の彦根、越後の高田、南部の盛岡、岩代いはしろの二本松、伊豫の西條、羽後の秋田、上總かづさの大多喜、長州の山口、越前の福井、紀州の和歌山、常陸ひたちの水戸、四國の高松
そこに一月餘ひとつきあまりも滯在たいざいしてゐるうちに九ぐわつになりけたので、保田ほたからむかふへ突切つつきつて、上總かづさ海岸かいがん九十九里くじふくりづたひに、銚子てうしまでたが、そこからおもしたやう東京とうきやうかへつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
手間取てまどり大森おほもりの邊りに來りし頃ははやこくなれば御所刑場おしおきばあたりは往來わうらいの者も有まじとおも徐々そろ/\來懸きかゝりしに更と云殊に右の方は安房あは上總かづさ浦々うら/\まで渺々べう/\たる海原うなばらにして岸邊を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
出は、上總かづさの知行所、先代の庭掃の株を讓られたまでゞ、身分にも何の變哲もありません。
とき髮結かみゆひ清三郎は上總かづさ迯行にげゆきし所天網てんまうのががたつひ召捕めしとら拷問がうもんの上殘らず惡事を白状に及びければこれまた引廻ひきまはしの上獄門ごくもん申付られけりさて亦お熊は引廻しのせつうへにはぢやうしたには白無垢しろむく二ツを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
とつくの昔に大川へ落ちて、今頃は安房あは上總かづさの漁師の子の玩具おもちやになつてゐますよ
浪人風の男で、——顏は忘れましたが、ひたひに古傷のあつたことだけ覺えて居ます。元黒門町の上總かづさ屋へ用事があるが、何處を何う行けばいゝか——と丁寧に訊くから、小戻りして教へて上げましたよ。
上總かづさでございます」