“丈(せ)” の例文
濁(にご)れる水(みづ)も色(いろ)を添(そ)へて極彩色(ごくさいしき)の金屏風(きんびやうぶ)を渡(わた)るが如(ごと)く、秋草模樣(あきくさもやう)に露(つゆ)敷(し)く袖(そで)は、丈(せ)高(たか)き紫苑(しをん)の梢(こずゑ)を乘(の)りて、驚(おどろ)き飛(と)ぶ蝶(てふ)とともに漾(たゞよ)へり。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
道代 (驚いて眼を見張るが、だんだん引寄せられるやうに丈(せ)のびをし、呼吸をはずませて、つひに相手の腕の中にからだを投げかける)
ママ先生とその夫 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
「例の毛生え薬を貰ってつけた先生です。田代六三郎と申します。田代六さん、一升徳利提(さ)げて。何故か徳利、丈(せ)が高い」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
丈(せ)が低くて枝が棘々(とげ/\)して幹が捩曲(ねぢく)れて居る日本の樹木よりも、セエヌの河畔に立つ白楊樹は Corot の名畫にも描(ゑが)かれた通り如何に優美温和に見えるであらう。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
皆は皆熱心にトムちやんの顔を凝視(みつめ)て立ち停りました。後の方にゐた丈(せ)の小さい子供は、トムちやんの顔がよく見えないので、他人(ひと)の袖の下から顔を出したりなどしてゐました。
女王 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
痩せた、丈(せ)の高い恰好が、どうしてもBには魔術家としか思われなかった。
扉 (新字新仮名) / 小川未明(著)
尾花丈(せ)高(たか)く生茂(おいしげ)れる中に、斜めにたてる石仏(いしぼとけ)は、雪山(せつざん)に悩む釈迦仏(しゃかぶつ)かと忍ばる。——只(と)見れば苔(こけ)蒸したる石畳の上に。一羽の雉子(きぎす)身体(みうち)に弾丸(たま)を受けしと覚しく、飛ぶこともならで苦(くるし)みをるに。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
ルピック夫人——石板は、お前には、丈(せ)がとどかないよ。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
顔を出したのが、鼻の尖(とが)った、目の鋭い、可恐(おそろ)しく丈(せ)の高い、蒼い色の衣服(きもの)を着た。凄(すご)い年増(としま)。一目見ても見紛う処はない、お雪が話したそれなんで。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「黒い男。丈(せ)の高い、頭から黒い男だ。」
悪魔 (新字新仮名) / 小川未明(著)
丈(せ)の高いランプが
丈(せ)の小造(こづくり)な、十五六とも見える、女が一人、蝶鳥なんどのように、路を千鳥がけに、しばらく刎(は)ね廻っておりましたが、ただもう四辺(あたり)は陰に籠(こも)って、烈(はげし)い物音がきこえますほど、かえって寂(しん)として
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)