魂魄こころ)” の例文
身体は自家にいながら、魂魄こころは宙に迷うていた。お宮を遊びに来さす為には家を変りたいと思ったが、お前のこと、過去これまでのことを思えば、無惨むざと、此処を余処わきへ行く事も出来ない。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
いましの行方へ魂魄こころまどふ。
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
それなら何うしようというのではないが、唯何にでも魂魄こころられ易くなっているから、道を歩きながら、フト眼に留った見知らぬ女があると、浮々うかうかと何処までも其の後を追うても見た。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
そうして二分間ほどして魂魄こころの脱けたものゝように、小震いをさせながら、揺々ゆらゆらと、半分眼をねむった顔を上げて、それを此方に向けて、頬を擦り付けるようにして、ひとの口の近くまで自分の口を
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)