鬼涙きなだ)” の例文
名誉職も分限者ぶげんしゃも教職員も自ら乗気になって出演の決心をつけた。どんな歌詞かは知らぬが鬼涙きなだ音頭なる小唄も出来て「東京音頭」の節で歌われるということであった。
鬼涙村 (新字新仮名) / 牧野信一(著)
私は夏の中頃から、鬼涙きなだ村の宇土酒造所に客となつて膜翅類の採集に耽つてゐた。
こんな沼には名前などは無いのかと思つてゐたところが、このごろになつてこれが鬼涙きなだ沼といふのだといふことを知つた。明るい櫟林にとり囲まれた擂鉢形の底に円く蒼い水を湛へてゐる。
沼辺より (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
鬼涙きなだ寄生木やどりぎ夜見よみ、五郎丸、鬼柳きりう深堀しんぼり怒田ぬた、竜巻、惣領そうれう、赤松、金棒、鍋川——足柄の奥地に、昔ながらのさゝやかな巣を営んでゐるそれらの村々を私は渡り歩いて、昆虫採集に没頭してゐた。
その村を憶ひて (新字旧仮名) / 牧野信一(著)