)” の例文
退職官吏だつた、彼の父は多少の貯金の利子を除けば、一年に五百円の恩給に女中とも家族五人の口をして行かなければならなかつた。
天才も口をする為には苦痛を見世物にする外はない。狂女は、——狂女も今は渡し守の前に隠し芸の舞を披露してゐる。
金春会の「隅田川」 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
文を売つて口をするのもい。しかし買ふ方は商売である。それを一々註文通り、引き受けてゐてはたまるものではない。貧の為ならばかくも、つつしむべきものは濫作である。
漱石山房の冬 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)