飄泊ひょうはく)” の例文
青年時代の彼がまた飄泊ひょうはくの旅から引返して来て、一旦いったん家出をした恩人の田辺の許へきまりの悪い坊主頭で一緒にわびを入れに行ったのも、この兄だ。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
夫故それゆえ江戸には門戸を維持するあたはず始終田舎へ而已のみ飄泊ひょうはく致し候次第なり。『安政絶句』に相洩し候はあえて意あるにらず。唯游歴而已致し候故むことを得ず相洩し候儀に御座候。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
この短い言葉の蔭に隠されてある昔の人の飄泊ひょうはくの思いもひどく彼の身にみた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)