雪解時ゆきげどき)” の例文
雪解時ゆきげどきの泉のように、あらん限りの感情が目まぐるしくわき上がっていたその胸には、底のほうに暗い悲哀がこちんとよどんでいるばかりだった。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
晴れた日が幾日いくにちも続いてかわいた春であつた。雪解時ゆきげどきにもかゝはらず清水は減つて、上田橋うへだばしたもとにある水量測定器の白く塗られた杭には、からびた冬のあくたがへばりついてゐた。
父の死 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)