闇黒くらがり)” の例文
かの寒い国でどこからも日の射さないような、昼でもほとんど真っ闇黒くらがりというような中に入れられて居るので衛生も糸瓜へちまもありゃあしない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
そこの天井裏の広い板敷の薄闇黒くらがりに四十年輩の体の小締めな、私の見知らない紳士と、背のすらりとした若い女と、ひそひそ立話をしてゐるのに出会した。
和解 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
梅雨つゆの頃は、闇黒くらがりに月の影がさしたほど、あっちこっちに目に着いた紫陽花あじさいも、この二、三年こっちもう少い。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ボートルレはバルメラ男爵に縋ろうとしてふと見ると、驚いたことにはバルメラ男爵は、闇黒くらがりを忍び忍び先へ進んでいる。しかも番人の男のすぐ近くまで進んでいっている。
「昨夜、寺の門の傍でお新を待伏せ、坊さんとの手切れ話を持ち出したがお新がうんと言わねえので、坊さんをつれ出しに庫裏へはいりこんだものの、闇黒くらがり庖丁ほうちょうを掴んで気が変ったと吐かしたか。」