閂子かんぬき)” の例文
やがて外の様子をうかがってしまうと、彼は鍵を錠前の中に差し込んだ。閂子かんぬきはすべり、とびらは開いた。れる音もせず、きしる音もしなかった。ごく静かに開かれてしまった。
鍵穴かぎあなも見え頑丈がんじょう閂子かんぬきが鉄の受座に深くはいってるのも見えていた。錠前は明らかに二重錠がおろされていた。それは昔パリーがやたらに用いていた牢獄の錠前の一つだった。
彼はとっ手に手をかけ、閂子かんぬきははずれ、扉は少し開いた。ジャン・ヴァルジャンは通れるくらいにそれを開き、ちょっと立ち止まり、それからまた扉をしめて、マリユスの方へ向き直った。
ジャン・ヴァルジャンは命がけの勢いで、街路を一飛びに飛び越し、袋町にはいり、ナイフの先で、小さな箱の閂子かんぬきをはずし、そしてすぐにコゼットの所へ戻ってきた。彼は一筋の綱を手にしていた。